第161回研究会報告 第21回スピンエレクトロニクス専門研究会報告
「光と磁気が織りなす現象の新展開」
日時:2008年7月14日(月) 10:00~16:30
場所:中央大学駿河台記念館 670号室
参加者:73名
光と磁気の相互作用はスピンによる光の制御から光によるスピンの制御へと広がりをみせ、メタマテリアルやナノ粒子等の新規媒質、スピンLED構造によるスピン注入とその検出、光磁化制御など新たな協調現象の利用やデバイス応用がなされている。今回の研究会では、これら光と磁気の新たな展開に関してわかりやすくかつ豊富な内容のご講演を頂いた。各講演とも非常に興味深い内容であり、参加者からも活発な質疑がなされ活気のある研究会となった。以下に各講演の概要を示す。
講演内容:
- 「光と磁気のナノサイエンス」
佐藤勝昭 (農工大、JST)
はじめに、本研究会で報告されるトピックスについてその位置づけを紹介された。次に、特性長と物理現象の関係について整理することによりナノ磁性体の特徴を明確にされた。最後にナノオプティクスの基礎が提供された。
- 「非相反的な方向二色性・線二色性」
有馬孝尚 (東北大、理研)
空間反転対称性を持たないCuB2O4が傾角反強磁性相において巨大な方向ニ色性を示すことが紹介された。さらに、磁化の向きによって、フォークト配置で方向ニ色性を示す場合とファラデー配置で方向ニ色性を示す場合が制御できることが報告された。
- 「金ナノ粒子が埋め込まれた磁性ガーネット薄膜での光と磁気」
冨田知志 (奈良先端大)
金属での表面プラズモンを利用した光学技術はプラズモニクスと呼ばれ、近年興味を集めている。講演では、プラズモニクスの新しい舞台として金ナノ粒子を埋め込んだイットリウム鉄ガーネット(YIG)膜が紹介され、そこでの近接場光と磁気の相互作用に関する実験的研究について報告がなされた。
- 「MCD分光法で探る強磁性半導体の電子構造」
安藤功兒、齋藤秀和、Vadym Zayets(産総研)
磁気円二色(MCD)分光法は磁性半導体におけるスピン・キャリア相互作用やその電子構造の強力な評価手段である。講演では、代表的な磁性半導体である(Cd,Mn)Te、(Zn,Cr)Te、(Ga,Mn)AsのMCDスペクトルについて議論がなされた。
- 「強磁性金属/絶縁体/半導体構造を用いた半導体へのスピン注入発光測定」
眞砂卓史(山口東理大)
強磁性金属から半導体へのスピン注入に関して、発光ダイオード構造とMgOトンネル障壁を用いて室温において大きなスピン注入信号が得られることを実証した。また、垂直磁化膜を用いることにより、零磁場においてスピン注入を実現できることが報告された。
- 「磁化の光誘起才差運動(実験)」
宗片比呂夫(東工大)
光励起の非熱的効果で生ずる磁化の非平衡状態を経由した磁化操作の実験的研究について報告がなされた。対象とする系は、光励起キャリアの寿命が金属系に比べて長い強磁性半導体系である。キャリアが受け取ったエネルギーが異方性エネルギーに転換される現象について議論がなされた。
- 「磁気異方性メタマテリアルとクローキング」
真田篤志(山口大)
非磁性誘電体ディスク共振器を配列して磁気異方性メタマテリアルを構成した。数値シミュレーションにより、ディスク共振器の直径と厚さのアスペクト比を0.3から0.5の範囲で変化させた場合に内径と外径の比が1:3なる環状クローク媒体を実現できる可能性があることが示された。