第151回研究会報告
「ここまできた次世代ハイブリッド記録の基礎技術」
日時:2006年11月17日(金)10:00~17:30
場所:新国際ビル9F(社)日本交通協会
参加者:74名
講演内容:
- 「ハイブリッド記録の最近の動向とプラズモンアンテナを用いた基礎実験装置」
中川活二(日大)
ハイブリッド記録における最新の研究動向、およびプラズモンアンテナを用いたハイブリッド記録の基礎実験装置と粒子媒体を用いた近接場プラズモン光シミュレーションの試みを紹介された。
- 「高NA光磁気ヘッドを用いた熱アシスト磁気記録の基礎検討」
上村 拓也(富士通研)
光磁気ヘッド(NA0.85)を搭載した動的な記録再生装置で熱アシスト磁気記録を検討した結果、保磁力13kOeのTbFeCo層に面記録密度約300Bbit/inch2に相当する微小磁区が記録できることが報告された。
- 「加熱記録のマイクロ磁区シミュレーション」
サイモン グリーブス(東北大)
熱アシスト記録シミュレーションを行った結果、ヘッドからの磁界勾配が無くても温度勾配の効果のみで磁区がクリアに記録できること、および磁気異方性Ku(T)と飽和磁化Ms(T)の関係がKu(T)∝Ms(T)2の場合よりKu(T)∝Ms(T)3の方が、高SNRが期待できることが報告された。
- 「GdFeCoフェリ磁性体の超高速磁化ダイナミクス」
塚本 新(日大)
GdFeCoフェリ磁性体に関し(1)角運動量補償点近傍での際差運動周波数、減衰定数の増大を利用した熱アシスト動特性制御法の提案、(2)フェムト秒パルスレーザーを利用した光による直接磁化制御について報告された。
- 「擬似体積記録型新テラバイト光ディスクストレージ(SVOD)」
粟野 博之(日立マクセル)
テラバイト光ディスクを容易に実現するSVOD(体積記録型光ディスク)が紹介された。これは、厚さ92ミクロンの薄型光ディスクを貼り合わせて両面型とし、更に100枚カートリッジに挿入したもので、任意の1枚を挿抜可能な市販ドライブ利用したディスクチェンジャーと併せて実演紹介がなされた。
- 「SmCo5垂直磁化ストレージ媒体の磁気的性質」
朝日 透(早大)
SmCo5媒体の磁気的性質および記録再生の結果を紹介された。Cu下地層あるいはCu/Ti2層下地層を用いて、永久磁石材料SmCo5合金の薄膜に垂直磁気異方性を付与する技術、更に、Co-Zr-Nb軟磁性下地層を用いた2層膜垂直磁気記録媒体ではRuバッファ層が不可欠であること等が報告された。
- 「熱アシスト磁気記録用L10 Fe-Ni-Pt膜の磁気特性」
金子 正彦(ソニー)
ガラス基板上に作製したFe60-xNixPt40(x=0-24)薄膜はアニール後L10規則相となり、c軸が膜面垂直に配向し、Fe45Ni15Pt40の垂直磁気異方性は1×107erg/cm3、キュリー温度は320℃であり、レーザ照射シミュレーションにより、2mW、2nsで350℃まで昇温できることから、熱アシスト磁気記録材料として有力であることが報告された。
- 「Fe/Pt積層構造からのc軸配向FePt規則合金薄膜の形成」
中川 茂樹(東工大)
ガラス基板上にFe(100)/Pt(100)配向2層膜ができることを示し、水素中熱処理によりc軸配向FePt規則合金膜が作製でき、更に基板温度管理の最適化により、ポストアニールなしにc軸配向が形成できることが報告された。
現在のハイブリッド記録は黎明期を脱するには至っていないものの、実現に向けて記録ヘッド、磁気記録媒体双方が両輪となって着実に進展しており、今後の展望が開ける有意義なものであった。