第132回研究会報告
「磁気素子作製のための微細構造制御技術の最新動向」
日 時: 2003年11月 28日(金) 10:00 – 16:40
場 所: 中央大学 駿河台記念館 275号室
参加者: 43名
講演内容
- 「エアロゾル・デポジション法による永久磁石の薄型化」
杉本諭(東北大)
エアロゾル・デポジション法を用いて作製したSmFeN系厚膜磁石の磁気特性と組織について紹介した。本法では速度10mm/minで成膜可能であり、得られた厚膜も微細結晶化によって1.8Tと高保磁力を示すことを示した。
- 「磁性体ナノファブリケーション」
中谷功(物材機構)
微細加工における鍵技術である反応性プラズマエッチング法を物理的および化学的側面から解説し、最近の高密度プラズマエッチング装置の現状について述べた。さらに磁性材料に対する反応性プラズマエッチング法の研究開発を紹介し、反応性プラズマエッチング技術の磁気ランダムアクセスメモリ、パターン媒体作製などへの応用について述べた。
- 「磁性ナノ構造の作製と放射光を用いた評価」
尾嶋正治(東京大)
放射光光電子分光装置と磁性薄膜作製用分子線エピタキシ装置およびレーザ分子線エピタキシ装置とを結合させたシステムの開発について紹介し、閃亜鉛鉱型MnAsドット、LaSrMnO3薄膜の電子状態と磁性との相関について示した。また、円偏光放射光を用いた光電子顕微鏡を用いた磁区構造の観察について述べた。
- 「ナノ酸化物層(NOL)技術による垂直通電型巨大磁気抵抗効果(CPP-GMR)素子の作製」
岩崎仁志(東芝)
CPP-GMRのMR比を増大するために、bcc相からなるCu積層のFeCo合金と、メタル導電パスを有する極薄酸化層をスペーサーに導入する方法を紹介した。1平方インチあたり100Gビット以上の面記録密度を可能にする高MR比が実現できることを示した。
- 「下地層による薄膜面内結晶粒径の増大とマイクロ波励起プラズマによるトンネル障壁膜の形成プロセス」
角田匡清(東北大)
高性能磁気抵抗素子実現のための薄膜微細構造制御に関する2つのトピックスについて述べた。FCC金属薄膜の面内結晶粒径の増大には(111)配向性を高める下地層を利用した上での超高真空中加熱処理が有効である。Al膜のプラズマ窒化法は極薄トンネル障壁膜の形成に適しており、Al-N膜を用いた強磁性トンネル接合膜で従来のAl-O膜の場合と同等のTMR比50%を実現し、その有効性を示した。
- 「磁性ナノドット配列を用いた微細構造におけるスピン依存単電子トンネル現象」
薬師寺啓(東北大金研)
スピン依存単電子トンネル現象を観測するためにはナノスケールの強磁性トンネル接合を作製する必要がある。CoAlOグラニュラー薄膜および2次元配列Feナノ粒子を用いた微細構造試料の作製方法、観測により見出された特徴的な磁気伝導現象について述べた。
本研究会は、微細化・薄膜化・多層膜化・構造制御など、磁気素子作製のための微細構造制御を実現するために必要な技術の最新動向を報告する目的で開催した。磁気素子は幅広い用途を含むため、微細化、構造制御を行うにあたって、どのような技術が重要かを理解するのが簡単ではないが、講演者の方々のご努力で初心者でも磁気素子作製技術の最新動向について理解することが出来たのではないかと考えている。
最後に、お忙しい中、快く講演していただいた講演者の皆様に紙面を借りて深く感謝いたします。