第141回研究会報告・第10回ナノバイオ磁気工学専門研究会報告

「磁性ビーズの作製とバイオ応用」

日 時:2005年3月15日(火)13:00~17:00
場 所:機械振興会館
参加者:54名

講演内容:

  1. 「バイオ磁気工学・事始め-磁性研究者のために」
    阿部正紀(東工大)

      バイオ磁気工学をこれから始められる方々を想定し、抗体、DNAなどの生理活性物質を表面に固定した医用磁性ビーズ(主としてフェライトナノ粒子)の基本を、その作製法に力点をおいて解説した。また、バイオ用語についても、分かり易く解説した。
     

  2. 「磁性ビーズの医療への応用」
    本多裕之(名大)

      機能を発揮する細胞組織を構築し、再生医療につなげる手法として、磁性微粒子を細胞に取り込ませ、磁石を設置して細胞を目的の場所に配置・接着させて細胞シートを構築する方法を考案した。この手法は組織の運搬もできるため、再生医療に有効である。
     

  3. 「磁性ビーズを用いた献血血液スクリーニング」
    坂倉康彦(ロシュ・ダイアグノスティックス)

      日本は世界で唯一、献血血液に対してB型肝炎、C型肝炎、エイズウイルスの核酸増幅検査が義務付けられている国である。磁性ビーズを用いて、これらウイルスのゲノム核酸を検出・抽出することにより、ウインドウ期を最小限に縮めることができ、その結果、汚染血液が輸血に使用されることなく事前に排除したことなどを紹介した。
     

  4. 「熱応答性ナノ粒子の開発とバイオへの応用」
    大西徳幸(チッソ石油化学)

      水溶液中において僅かな温度変化で分散凝集を可逆的に繰返す熱応答性磁性ナノ粒子を開発した。この微粒子は、その表層に抗体等を固定化することにより、様々なバイオセンサーとして使用できる。診断薬等への応用においては、その感度を飛躍的に向上でき、測定時間も短縮できる。
     

  5. 「高性能薄膜ホール素子による磁性微粒子の検出」
    サンドゥーアダルシュ(東工大)

      バイオセンサーとして用いられる超常磁性微粒子を検出するために、500 nm角の検出領域を持つInSb薄膜高感度マイクロホール素子を開発し、その検出の理論と作製法を述べた。また、同種のバイオセンサーであるGiant Magnetoresistive(GMR)素子などと比較して、同ホール素子の優れた特徴と将来性について述べた。

今回の研究会では、「磁性ビーズの作製とバイオ応用」を主題として、磁性ビーズの作製法、磁性ビーズのバイオ・医療への応用、磁性微粒子の高感度検出法と、幅広い講演が行われた。また、一般の磁性研究者に対して、バイオ・医療用語を分かり易く解説した。さらに、多くの質疑応答や磁性研究者からのコメントがあり、共催の意義十分な研究会であった。

(東工大 阿部正紀、理研 野田紘憙)