第107回研究会報告
「超高感度マイクロ磁界センサの開発動向とその応用」
日 時:1998年11月6日(金) 10:00~17:00
場 所:商工会館
参加者:67名
本研究会は、最近産業界や医療分野で急速にニーズが高まっている超高感度マイクロ磁界センサにスポットをあて、その開発動向と具体的な応用例から今後の展望を探るために企画された。67名という参加者の多さに、この分野への関心の高さがうかがえる。講演題目と講演者は以下の通りである。
・総説
1. 超高感度マイクロ磁気センサへの期待
毛利佳年雄(名大)
・超高感度マイクロ磁界センサの開発動向 2. シリコン及び化合物半導体マイクロ磁界センサの研究開発動向
杉山佳延(電総研)
3. MIマイクロ磁気センサの開発動向
毛利佳年雄(名大)
・超高感度マイクロ磁界センサの応用例
4. 小型・高感度磁気センサの応用
川井健司(山武)
5. MIセンサの自動車走行システムへの応用
本蔵義信(愛知製鋼)
6. 医用磁気マイクロマシンと超高感度磁界センサ
荒井賢一(東北大)
・パネルディスカッション
司会:石井修(山形大)、パネリスト:講演者全員
研究会を始めるにあたり、毛利氏から超高感度マイクロ磁界センサの役割と位置づけについて概説していただいた。センサとは何かという定義の話から始まり、多角的な視点から超高感度マイクロ磁界センサの短期的及び長期的な役割について展望した。
続いて、半導体ベースと磁性体ベースの超高感度マイクロ磁界センサのトピックスについてそれぞれ2人の講師に講演していただいた。はじめに杉山氏から、シリコン磁界センサ及び化合物半導体磁界センサの開発動向について講演があった。コストで優位なシリコン磁界センサの開発が現在主流になっているとの内容で、シリコン磁気トランジスタ・ホール素子、フラックスゲート型センサ、真空マイクロ磁界センサの例が紹介された。また化合物半導体による磁界センサについても、InGaAsをチャネル層とするヘテロ接合マイクロホール素子など最新のトピックスが紹介された。続く毛利氏は、最近注目を集めているMI(磁気-インピーダンス)効果を利用した磁界センサについて講演した。MI効果の原理と特徴の説明にとどまらず、負帰還回路やパルス励磁方式等の回路構成上のポイントについても詳細に解説した。また、現在進めている MI磁界センサの産官学プロジェクトについても触れ、モバイル地磁気センサ等の成果を紹介した。
後半のセッションでは超高感度マイクロ磁界センサの応用事例として3件の講演があった。はじめに川井氏より、従来のMRセンサに比べ飛躍的に高感度化を達成したハネウエル社製MRセンサの特徴とその応用事例について講演があった。自動ドアの開閉制御装置や磁気コンパスへの応用例を紹介するとともに、超高感度磁界センサを取り扱う上での留意点について実例を挙げて解説した。続いて本蔵氏から、自動車自動走行システムへのMI磁界センサの応用について講演があった。建設省が2002年に実用化を目指しているAHS(Advanced-Highway-System)への適用を目標に、MI磁界センサの耐環境性の向上と小型化を達成したとの内容であった。最後に荒井氏より、生体内を自走する泳動型磁気マイクロマシンの位置検出に高周波キャリア型薄膜磁界センサを適用する試みと、電気機械結合係数の高い磁性薄膜による超高感度歪みセンサ及びスマートアクチュエータの紹介があった。アクチュエータとセンサのシステム化を進め、医用磁気マイクロロボットシステムへと発展させることが目標であるとの内容であった。
研究会の最後に講演者全員をパネリストに迎え、パネルディスカッションを行った。限られた時間ではあったが、講演者各人の研究のセールスポイントや夢を中心に学術講演会では聞けないような貴重な話を聞くことができた。