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「スピンと量子情報処理・通信」
日時:2011年12月7日(水) 13:00〜17:20
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:17名
量子を使った超高速並列処理コンピュータや絶対安全な暗号通信などが注目されている量子情報科学の分野では、スピンおよび磁気は大きな役割を果たしている。本研究会では、本分野において第一線でご活躍の6名の講師の方を迎え、最新の研究成果の紹介とこれらの技術の将来性等についての活発な議論が行われた。以下に講演の概略を示す。
講演内容:
- 「量子ドット集合体のコヒーレンスの基礎と応用」
○早瀬潤子1, 江馬一弘2, 赤羽浩一3, 山本直克3, 佐々木雅英3
(1慶大, 2上智大, 3NICT)
量子ドット集合体中の励起子コヒーレンスの物理・制御に関する研究成果が紹介された。集合体の不均一性の影響を除去できるフォトンエコー法を用いて、歪補償InAsの量子ドット集合体のコヒーレントダイナミクスとラビ振動による量子制御に関して検討した結果が報告された。さらに、量子メモリへの応用に関する試みも紹介された。
- 「超伝導磁束量子ビットとスピン集団のコヒーレント結合」
○齊藤志郎1, X. Zhu1, A. Kemp1, 角柳孝輔1, 狩元慎一1,
中ノ隼人1, W. J. Murano1,
都倉康弘1, M. S. Everitt2,
根本香絵2, 嘉数 誠1,水落憲和3,4, 仙場浩一1
(1NTT,2国立情報研,3阪大,4PRESTO JST)
電子スピン集団の量子メモリ応用に向けた、超伝導磁束量子ビットと電子スピン集団のコヒーレント結合についての研究成果が紹介された。超伝導磁束量子ビットとダイヤモンド結晶中の6×107個のNV−中心に束縛された電子スピンとの間のコヒーレント結合を分光測定により確認し、時間領域実験では量子1個分のエネルギーの交換を示すコヒーレント振動の観測に成功したことが報告された。
- 「超伝導位相量子ビットにおける2ビットゲート評価とアルゴリズム実証」
○山本剛1,2, M. Neeley2, E. Lucero2, M. Mariantoni2, R. Bialczak2,
M. Lenander2, A. D. O'Connell2,
D. Sank2, H. Wang2, M. Weides2,
J. Wenner2, Y. Yin2, A. N. Cleland2, J. M. Martinis2
(1NEC, 2UCSB)
量子ビット同士を結合させる技術に関連した、超伝導位相量子ビットにおける位相ゲートを用いた実験について紹介された。量子プロセストモグラフィーによるゲート特性評価では、期待通りのゲート動作が確認されたこと、さらに、ドイチェ−ジョザのアルゴリズム実証、量子フーリエ変換の実証などの実験結果について報告された。
- 「ダイヤモンド中の単一NV中心の量子情報処理・通信への応用」
水落憲和(阪大)
ダイヤモンド中のスピンを用いた量子情報の研究と、その量子コンピューティングや量子暗号通信、量子中継等への応用について紹介された。ダイヤモンド中のNV中心は、室温において単一光子の発生とその単一スピンの操作ができる唯一の固体中の発光中心であることから、多くの注目を集め、幅広い応用が期待されることが紹介された。さらに、ダイヤモンド半導体を用い、固体素子としては初めて電流注入による室温での単一光子発生に成功したことが報告された。
- 「結晶中希土類イオンの核スピンと光共振器を利用した量子コンピュータ」
市村厚一(東芝)
酸化物結晶中に分散させた希土類イオンの核スピンの状態を量子ビットとし、量子ビット間を共振器モードで結合する量子コンピュータの研究が紹介された。3つの光を用いたアディアバティック・パッセージによる1量子ビットゲートの実験、結晶中の共振器モード/イオン間結合の観測、共振器モードを利用した2 量子ビットゲートの成功確率の見積り等の結果が報告された。
- 「量子ホール系と核スピン」
遊佐 剛(東北大)
磁場中の2次元電子などで長距離にコヒーレントな電子状態が保たれる“量子ホール系”と、半導体試料の高品質化・微細加工技術の進歩によって電子スピンとの相互作用が観測されるようになってきた“核スピン”をキーワードに、いくつかのトピックに関する最近の成果が紹介された。核スピンのコヒーレント制御、分数量子ホール状態の光学観測、多量子繊維を利用した磁気共鳴イメージング、量子ホール系を使った量子プロトコルなど、興味深い研究成果が報告された。
(文責: 天野 実(東芝))
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