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第137回研究会報告
「SQUID技術の開く新時代」
 
日 時:2004年7月23日(金)10:00〜16:40
場 所:日本化学会化学会館
参加者:32名
 
  1. 「高感度SQUID磁束計の開発とその応用」
      中山 哲(エスエスアイ・ナノテクノロジー)
     SQUID磁束計の開発史とともに、小動物用高分解能SQUID磁束計、非破壊計測用SQUID磁束計、走査型SQUID顕微鏡等のシステム構成と特徴及びデータについて報告した。さらに、可搬型の非接触電流計測システムならびに電流分布変換アルゴリズムについて紹介した。
  2. 「生体磁気計測と磁気シールド技術」
      山崎慶太(竹中工務店)
     まず既存及び現状の生体磁気計測施設、各メーカーのシールドおよびSQUID磁束計の仕様について報告し、次にジキシールドルーム(MSR)の微振動に起因する磁気ノイズとその対策、MSRに代わる生体磁気計測用シールドとして期待されるパネル式アクティブ磁気シールドの概要について報告した。
  3. 「SQUID磁束計による心磁図計測」
      神鳥明彦(日立中研)
     SQUID磁束計を用いて、世界に先駆けて心磁計の製品化を行ってきた。本報告では心磁計特有の解析手法を中心に解説を行い、磁界分布を電流アロー分布に投影した手法を用いて、64チャネルや胎児用など心磁計に関する最新の研究開発状況について報告した。特に心電図では判断できない症状の分離が可能であること、脳磁図にも応用した際の臨床的成果などについて述べた。
  4. 「保険適用開始による脳磁図臨床応用の現状」
      中里信和(広南病院)
     2004年4月より術前診断に限り保険適用となった脳磁図検査に関して、臨床における自発活動や誘発磁界の応用の現状を報告した。さらに、日本において脳磁図計測可能なほぼ全施設に対する研究動向アンケートの最新結果を示し、神経疾患・精神疾患の診断など、今後は術前診断以外への応用も見込まれることを述べた。
  5. 「高温超伝導SQUIDを用いた免疫検査システムの開発」
      円福啓二(九州大)
     磁気マーカーとSQUID磁気センサを用いた磁気的な免疫検査システムを開発した。本システムの改良により、病原菌やガン細胞などのバイオ物質を従来の光学的手法に比べて100倍以上に高感度に検出できることを示した。
  6. 「高温超伝導SQUIDを用いた食品内異物検査とDNA診断応用」
      田中三郎(豊橋技術科学大)
     食材中あるいは製造過程で含まれる異物、特に危険性の高い金属異物の検出を目的とした検査システムの開発及びその実用化について報告した。さらに、DNA遺伝子発現機能の解明においてもSQUID応用が可能であると考えられていることについて述べた。
  7. 「高温超伝導SQUIDプローブ顕微鏡」
      糸崎秀夫(大阪大)
     高温超伝導SQUIDを用いた磁気顕微鏡を開発し、高透磁率材料であるパーマロイの針を磁束ガイドとして用いることにより、数ミクロンの空間分解能があることを示した。さらに、磁気画像のデータ処理に関して検討し、その有効性について述べた。

 本研究会は、主として医療診断の分野で非侵襲診断、解析手法として注目され、著しい性能向上をとげてきたSQUID(Superconducting Quantum Interference Device)磁束計が、近年、その利便性の点から応用範囲を拡張しつつあるという現状をふまえ、本研究会では、医療現場でSQUID磁束計の果たす役割から、最近の技術動向、将来展望を報告する目的で開催した。SQUID技術はまさに、MRIに続き、医療ニーズが技術の進展を牽引した好例となろうとしている。この分野に携わる方々はもちろん、SQUID技術に興味のある方々にとっても最新の研究動向が理解できたのではないかと考えている。

(東北大 松木英敏)