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第123回研究会報告
「通信用磁気デバイス・磁気MEMSの動向と将来展望」
日 時:
2002年2月7日(木)〜8日(金)
場 所:
機械振興会館(港区)
参加者:
100名
講演内容(○印は講演者)
基調講演
「磁性材料に支えられる通信技術」 ○荒井賢一(東北大)
パワーマグネティックスの時代から大容量通信へと磁気工学の応用範囲が拡がる中で,小型電源回路デバイス,高周波集積化マイクロインダクタ,静磁波デバイス,電磁波障害対策用磁性材料などを例に,小型化やGHz対応の実現に大きな役割をはたしている各種の磁性材料について解説した.
高周波通信用デバイス
「移動通信用高周波デバイスの開発動向」 ○伊東健治(三菱電機)
リソグラフィ技術の微細化とSiGe材料の実用化という半導体技術の進展によって携帯電話用高周波デバイスが格段に高性能化され,その一方でFractional-Phase Locked Loop(PLL)やダイレクトコンバージョン受信機などの高周波アーキテクチャの進展により機能集積度が一段と向上したことを紹介した.
「RF集積化磁性薄膜インダクタ」 ○山口正洋(東北大)
高周波アナログ集積回路で発信器,増幅器に用いられるRadio Frequency(RF)集積化インダクタの高Q化と小型化を目的に,RF帯で使用可能な強磁性薄膜をコア材として組み合わせる試みについて解説した.また,国内外での研究動向や透磁率の計測技術についても紹介した.
「コイルオンチップ型非接触認識ICシステム」 ○川村哲士(日立マクセル)
超精密電気めっき技術によりSiウェハ上に外形2.5×2.5mm
2
,幅14μm,膜厚4μm,間隔4μmのマイクロコイルを一体形成したコイルオンチップ非接触認識幅ICを開発し,密着型Radio Frequency Identification(RFID)システムへの応用を紹介した.
「無線アンテナ用RF-MEMSデバイス」 ○鈴木健一郎(NEC)
(講演中止)
「ワイヤレス通信におけるRF-MEMSの設計」 ○北島徹雄(サイバネットシステム)
RF帯用Micro Electro-mechanical Systems(MEMS)の設計から製造までを受託業務を,台湾やフランスを中心にしてグローバルに展開していくことを提示し,高Q値インダクタやバリアブルキャパシタの設計に利用可能なソフトウェアの紹介をおこなった.
通信用リレー
「マイクロリレーアレー」 ○桑野博喜(NTT),保坂 寛(東大)
半導体プロセスを活用したマイクロマシン技術による電磁型マイクロリレーの動作特性を示した後,精密機械加工技術を用いて8×8ミニチュアリレーアレーを試作し,通信用Main Distributing Frame(MDF:主配線盤)接続などに適用できることを示した.
「高周波マイクロマシンドリレー」 ○積 知範,藤井 充,今仲行一(オムロン)
低消費電力を特徴とする静電駆動方式のマイクロリレーの構造,製法,特性について解説した.マイクロマシニング技術の巧みな応用により駆動部に非線形ばね構造を導入し,復帰力を向上させる技術を紹介した.
光通信用デバイス
「フォトニックネットワーク用光導波路デバイス」 ○丸野 透(NTT)
光ファイバ通信の技術動向および大容量化のキー技術となる高密度波長多重システムについて解説し,そこで必要となるデバイスとして,平面型光導波路技術を用いた波長フィルタや光スイッチなどを紹介した.
「磁気光学材料の基礎と光通信への応用」 ○佐藤勝昭(東京農工大)
光アイソレータ及び光サーキュレータの動作の基本となるファラデー効果の起源を電子状態の立場から解説した後,磁性ガーネットや希薄磁性半導体CdMnTe等の材料に関しファラデー効果性能指数や磁気特性などを紹介した.
「磁気光学デバイス」 ○福島暢洋(富士通)
光アイソレータおよび光サーキュレータの役割から構造および動作原理までを解説.特に,偏光無依存型のものについて各種構造を詳述すると共に,これらの素子を実際に構成する場合のポイントにも触れた.
「光アイソレータ用Nd-Fe-B焼結磁石」 ○槇田 顕(住特金)
ファラデー回転子を磁気飽和させるためにアイソレータに組み込まれる小型永久磁石の要求特性について解説した後,小型のNd-Fe-B焼結磁石を造粒粉の成形により機械加工なしに製造する新規なプロセスを紹介した.
「可変型磁気光学デバイスとその材料」 ○梅澤浩光,徳増次雄(FDK)
可変機能を有する磁気光学デバイスとして,可変光アッテネータとそのファラデー回転子用Liquid Phase Epitaxy(LPE)膜を中心に,チルトイコライザ,光スイッチについて,それぞれ用途,構成,性能を解説した.
「MEMS光スイッチの最近の話題」 ○年吉 洋(東大)
MEMS技術の光学応用の歴史を紹介した後,光クロスコネクタに使われる2次元光スキャナの構成,使用,設計指針を中心に,最近のMEMS光スイッチの技術動向を紹介した.
その他の話題
「準マイクロ波帯用電磁ノイズ対策材料」 ○吉田栄吉,小野裕司,安藤慎輔(トーキン),大沼繁弘(電磁研),山口正洋,島田 寛(東北大)
ポリマー中にFe-Si-Al磁性フレークを分散させたコンポジット磁性シートが良好な高周波ノイズ対策材料になる.数10MHzから数100MHzにいたる広い周波数で効果がみとめられる.さらに,Fe-Al-Oを含んだグラニュラーシートでは準マイクロ波領域(数GHz)まで効果があり,回路基板内部のノイズ対策にも使えることがしめされた.
「医療応用を目指す磁気マイクロマシン」 ○石山和志,荒井賢一(東北大)
小型永久磁石のトルク力を用い,外部磁界を駆動源として医療用のマイクロマシンを試作した.このマシンは粘性の大きな液体中あるいは生体肉部分も貫通駆動できる.ガン患部に到達したあとの温熱療法などが想定される.また内視鏡の先端にとりつけ生体内の複雑な経路をガイドするツールとしても有効なことが紹介された.ビデオによる楽しい発表であった.
「HDD用マイクロアクチュエータ」 ○今村孝浩(富士通),島内岳明(富士通研)
磁気ヘッドのマイクロアクチュエータのこの10年の歴史を概観した.最近の成果としては,ブレーナ型の磁気ヘッドアクチュエータの試作例を示した.静電駆動50Vで0.55ミクロンのストロークが可能.さらに,シリコン材料,プロセスによるスライダーの試作例が紹介された.7〜9nmの低浮上が確認できた.今後MEMS技術を多用した超高密度トラッキング用アクチュエータが期待される.
例年合宿形式で実施している一泊研究会だか,昨今の経済情勢に鑑みて,今回は都内の会場での2日間の研究会として企画した.幸いにも多くの方にご参加いただき活発な質疑が行われた.内容も多岐にわたり,参加者にとっては収穫の多い研究会であったと確信する.また,初日の夕方に開かれた自由参加の懇親会では,参加者同士の交流がはかられ,応用磁気学会の将来像の話題などで盛り上がっていた.(住特金 槇田 顕)