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第122回研究会・第3回化合物新磁性材料専門研究会
「遷移金属・貴金属系磁気記録材料の磁気物性と磁区構造」
日 時:
2002年1月18日 (金) 9:20-18:00
場 所:
早稲田大学理工学部
参加者:
54名
講演内容
「イントロダクション」 朝日透(早大)
研究会全体の構成を概観するとともに,最近の研究成果であるCo/Pd多層膜垂直磁気記録媒体の下地層依存性についてふれ,アモルファスSi層やPd-Si層が特性向上に有効であることを示した。
「磁気光学効果による3d遷移/貴金属多層膜の磁気物性の解明」佐藤勝昭(農工大)
さまざまな磁性/非磁性金属多層膜の研究を概観した。特に,3d系と4d系の違い,多層膜の膜厚依存性,近接効果などについて系統的な解説を行った。
「Co/Pd多層膜の開発」 松沼悟(日立マクセル)
垂直磁気記録媒体としてのPd-SiNシード層付Co/Pd多層膜の磁気特性を紹介した。シード層の効果で,粒子間磁気的交換結合が小さく遷移性媒体ノイズを抑制することに成功した。
「磁気円2色性で何がわかるか?」 城健男(広大)
基礎物理理論の立場から,X線円2色性の理論を,非常に平易に解説した。特にその総和則の導出や実験と理論との比較は非常に教育的であった。
「円偏光放射光を用いた軟X線内殻磁気円二色性による磁気多層膜・ナノクラスターの磁性解明」 小出常晴(高エネ研)
X線円2色性を用いて磁性多層膜や磁性クラスターの磁性を調べた。Pt/Co多層膜では, Coの一部が膜厚に応じてPt層の界面の効果で,fccからhcpに構造相転移を起こしていることを報告した。
「磁気力顕微鏡による磁気記録媒体の磁区構造の解明」 石尾俊二(秋田大)
垂直磁気記録媒体の磁気クラスターを磁気力顕微鏡によって観察し,媒体ノイズの発生過程を明らかにした。また,磁気力顕微鏡の測定原理とその高分解能化についてもふれた。
「スピン偏極走査トンネル顕微鏡,交換力顕微鏡とは?」 武笠幸一(北大)
走査トンネル顕微鏡(STM)のチップを磁性体にすることによってスピン偏極STMや交換相互作用力顕微鏡を設計し,それを用いて反強磁性体NiOのスピン配列の測定に成功した。
「強磁性体における磁壁と線状欠陥の相互作用」 芝内孝禎(京大)
線状欠陥を用いた磁壁の制御について報告した。彼らは磁壁の形成パターンが超伝導体中の量子化磁束の運動と同じ物理にしたがっていることに注目しユニークな解析を行った。
「The Magnetic Anisotropy of (FeCoNi)50Pt50 Alloy Thin Films and Application for Data Storage」 鈴木孝雄(豊田工大)
(FeCoNi)50Pt50合金の作製と磁気特性を紹介した。特に,磁気異方性がどのような物質パラメタに依存しているかを定量的に検討し,価電子数と非常に強い相関があることを見出した。
「FePt L10構造合金の磁気記録特性」鈴木淑男(秋田高度技研)
FePt合金系薄膜の作製条件と磁化特性を報告し,高ガス圧スパッタにより,400℃以下の低温で磁気特性の優れた薄膜を作製できることを示した。
「中性子散乱を用いた3d遷移-貴金属合金の磁気物性の解明」 角田頼彦(早大)
中性子散乱を用いたPtFe合金の磁性の研究成果を報告した。それによればこの系は単なる強磁性系ではなく,Fe濃度に応じて変化する複雑な反強磁性相互作用を持ち多彩な磁気秩序を示す。
「まとめ」 寺崎一郎(早大)
講演全体のまとめとして,次世代に期待される1平方インチあたりテラビットに集積された垂直磁気膜が,基礎物理としては非常に強いメソスコピックなゆらぎを伴うことを示した。
(早大 寺崎一郎)