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第118回研究会/第71回マイクロ磁区専門研究会
「100Gb/in2時代の磁気記録−新しいアプリケーションと技術展開−」
日 時:
2001年2月1日(木) 13:00 〜 2月2日(金) 14:55
場 所:
湯河原厚生年金会館
参加者:
89名
プログラム:
ネットワークとストレージ 岸上順一 (NTT)
ポストVTR時代の放送局用ストレージの展望 中村昇一 (NHK)
Storage Area Network (SAN)の展開 大枝 高 (日立)
100Gb/in2用磁気ヘッドの課題 押木満雅 (富士通研)
記録ヘッドのマイクロマグネティクスシミュレーション 仲谷栄伸 (電通大)
高性能スピンバルブの極薄膜化に対するクリーンプロセスの意義 角田匡清(東北大)
ハードディスクレコーダー 三橋孝通 (ソニー)
1インチ型ハードディスクドライブ"マイクロドライブ"の可能性 黒木賢二 (日本IBM)
垂直磁気記録における記録再生スキーム 村岡裕明(東北大)
垂直記録の実用化に向けての検討 高野公史 (日立)
垂直磁気記録媒体の磁気的微細構造と熱緩和 島津武仁(東北大)
新規構造垂直磁気記録用単磁極ヘッド 伊勢和幸(AIT)
アモルファス下地層Co/Pd多層膜垂直磁気記録媒体の微細構造と磁気特性 朝日 透 (早大)
自己組織化ポリマーを使った新しい媒体ナノパターニング技術 喜々津 哲 (東芝)
シミュレーションによるキーパー媒体の記録再生特性と熱安定性 鷹栖幸子 (東邦大)
交換結合を有する面内磁気記録媒体の熱揺らぎ耐性について 猪又明大(富士通研)
ハードディスク(HDD)の記録密度は年率100%という高いペースで増大しており、100Gb/in2を超える技術が視界に入ってきた。一方、ネットワークの進展の中での新しいアプリケーションの可能性が注目されている。本研究会では,前半に通信、放送、家電といった分野で要求されるストレージの動向と展望につき、専門家よりご紹介いただき、後半では、高密度化を維持するために必要な最新技術につきご紹介いただいた。
最初の3件は、「ネットワーク時代のストレージ」に関するものである。岸上氏は、ネットワークとストレージの一体化が既に始まっていることを指摘した。今後の課題は、ネットワーク上の膨大な情報について、いかに著作権管理しつつ、整理、加工しやすい枠組みを構築していくかということである。中村氏は、放送局用の番組制作、編集、配信システムでのストレージの現状を紹介した。局用は今でもテープが主流であるが、短時間番組用のHDDサーバシステムが、2000年秋より稼動している。HDDシステムの課題は低コスト化、長期信頼性である。大枝氏は、Storage Area Network(SAN)の現状と展望を紹介した。SAN導入の第1の動機は、ハードコストの8倍ともいわれる、ストレージ管理コストの低減である。今後は、ファイバーチャンネルに替わってTCP/IPにて接続する方式が期待されている。
講演4〜6は、ヘッド技術に関するものである。押木氏は、100Gb/in2の記録密度を実現するための、記録再生ヘッドの仕様を提示し、微細加工技術、高感度化、高周波化などの課題と、それを解決する為のアプローチにつき概説した。仲谷氏は、記録ヘッドの磁界解析にマイクロマグネティクス手法を適用し、ヘッド磁極の中で磁気モーメントがどのように反転しているかを、動画像にて示した。角田氏は、スピンバルブ製膜に超高真空プロセスを適用することによって、交換結合磁界の増大、耐熱性向上、比抵抗の低減の効果があることを報告した。
講演7〜8は、「家電・携帯応用」に関するものである。三橋氏は、ハードディスクレコーダーの実演を行い、録画中の時間差再生などの機能により、従来のVTRでは考えられなかった使用法が可能となることを示した。黒木氏は、1インチHDDの商品コンセプト、開発にあたって工夫した点(コーナーへの緩衝材設置、内蔵温度センサーによる記録条件最適化など)につき紹介した。
講演9〜13は垂直磁気記録に関するものである。村岡氏は、垂直磁気記録の分解能、媒体ノイズ、熱緩和などの解析をもとに、200Gb/in2の記録密度を達成する為の必要条件を提示した。高野氏は、垂直記録HDDを実現するにあたって課題である、サーボ技術、スキュー角対策、耐熱性、軟磁性膜起因のノイズ対策などについて、解決の見通しがついてきたことを報告した。島津氏は、垂直媒体の磁化反転が、Stoner-Wohlfarthの単一粒子反転モデルに、熱の効果や磁化容易軸の角度分散の効果を取り入れたもので記述できることを示した。伊勢氏は、カスプコイル励磁型という新しい単磁極ヘッドを用いることにより、記録効率、外部磁界耐性が大幅に改善されたことを報告した。朝日氏は、Co/Pd多層膜媒体においてCおよびSiアモルファスを下地層として用いることにより、角形性が良好でかつ低ノイズの媒体を得ることができたことを報告した。
講演14〜16は媒体技術に関するものである。喜々津氏は、ポリマーの自己組織化現象を利用した新しいディスクリート媒体の作製方法を紹介した。2種のポリマーが分離するときに発生する島状パターンをエッチングのマスクとして利用する。鷹栖氏は、軟磁性キーパー層を持つ媒体にて、耐熱性を改善できることを、計算機シミュレーションをもって示した。猪又氏は、反強磁性結合を利用した面内媒体を用いて、耐熱性と低ノイズを両立させながら高密度記録が可能であるという見通しを示した。
HDD業界は、価格の低下により、売れても利益がでないといった状況になやまされている。これを打破するには、技術的なブレークスルーのみならず、応用に関しても何らかの工夫が必要であり、今回のような応用分野の方々との交流の場が、今後ますます重要になってくるであろう。懇親会ではビールの消費量もすすみ、本音での議論が深夜まで活発に続けられた。
(日立 鈴木良夫)