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「環境重視社会における磁性材料
〜電気自動車への取り組みと永久磁石材料」
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日 時:1998年5月28日 13:10−17:00
場 所:商工会館6階会議室
参加者:96名
105回研究会は環境重視社会における応用磁気分野の役割を電気自動車用(EV)永久磁石材料という切り口から見ようという意図で企画された。96名という多くの参加者を得、電気自動車に対する関心の高まりが伺われた。
1)電気自動車普及への世界の取り組み〜環境/エネルギー問題対策の責任 |
藤崎 耿(電動車両協会) |
2)電気自動車と主要構成部品 |
川勝史郎(ダイハツ工業) |
3)電気自動車の駆動モータ方式と今後の展望 |
近藤康宏(松下電器) |
4)自動車用磁石の現状と将来 |
加藤義雄(豊田中研) |
藤崎氏は環境・エネルギー問題を背景としたEV導入の歴史、ヨーロッパのEV普及活動、日本の状況、および環境・エネルギー問題対策責任の観点を整理し現状を解説した。ドイツでの1992年から1996年に及ぶ4年間の実証実験の結果、発電の環境負荷の大小に応じてEV導入による環境負荷の評価が分かれるという結果が得られたことが紹介された。また、日本ではEV及び関連部品の開発費用は現在の内燃型エンジンの自動車(CV)の販売利益でまかなわれている現状が指摘された。
川勝氏は自動車黎明期には主役であったEVはガソリン車との競争に敗れて一旦は消滅した方式であり、EVの再開発にはかなりの技術的ブレークスルーが必要であると指摘した上で、EVの歴史を概観し、技術開発の動向を述べた。純粋なEVとCVとの間をつなぐ様々のハイブリッド電気自動車(HEV)が存在し、話題となっているトヨタのプリウスは低速時のCVの欠点をアシストするトルクアシスト型のHEVに相当するとした。時間の都合で講演からは割愛されたが、駆動モータ以外にもテキストに記載された様々の電装補機に応用磁気の出番がありそうに思われた。 近藤氏は駆動モータの形式と特色を解説し、現時点では寿命、信頼性、高速回転可能性、高効率などの観点から磁石埋め込み型のIPM(InsertedPermanent Magnet)型と称されるロータ形式がEVに最適と考えられるとした。また、出力トルクが大きく高速回転が可能という条件を満たすためには、EV駆動モータ用磁石には高磁束密度よりはむしろ減磁作用に対する耐力や高温特性が良好なことが要求されるとした。将来は燃料電池を搭載したEVが現実化することによって航続距離の拡大が実現し、CVの置き換えが可能になるが、そこで使用されるモータはコストの観点から永久磁石を使用しないリラクタンスモータであろうとの見解を示した。
加藤氏は自動車における磁石応用の例をいくつか紹介し、自動車に用いられる永久磁石には低コストであること、耐熱性が優れていることなど磁気特性以外の面でも重要なファクターがあることを示した。その例として、プレス成形を無人化し、2次加工を全て省略した電動カーテン用フェライト磁石の内製例を示した。プリウスの駆動モータと発電機に希土類磁石が使用されていることや、将来の高速道路自動車誘導システムにおいて希土類磁石の磁気ネールが道路に打ち込まれる構想など、希土類磁石が多量に使用されるいくつかの可能性を指摘したが、磁石コストに対しては厳しい注文が出された。
全体を通し、電気自動車における永久磁石材料と駆動モータなどの応用の接点を明確にするところまでは行かなかったかも知れないが、電気自動車については社会的な導入努力やインフラストラクチャー整備の重要性、および駆動モータについての技術動向の概略が理解できた。極めてホットな分野であるので、今後もこのような研究会が開催され、より多くの技術者、研究者の参加を得ていっそう突っ込んだ討論がなされることが期待される。
(住特金 広沢)
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