2. 超高密度磁気記録媒体(I) −熱安定性と低ノイズ化− |
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・磁気記録媒体における熱揺らぎに関する計算機シミュレーション |
仲谷栄伸(電通大)他 |
・磁気記録の将来像 −垂直記録技術の登場に必要なこと− |
パネリスト: |
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山川清志(AIT)、田上勝通(NEC)、 青井基(日立),
村岡裕明(東北大)、二本正昭(日立) |
・光記録のSIL技術、超近接場光学技術の可能性と課題とは? |
鈴木孝雄(豊田工大) |
・極限スペーシングの動向−コンタクト・ニアコンタクト方式 |
柳沢雅広(NEC) |
8. 高Bs、高周波サブミクロン記録ヘッド材料・加工技術 |
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・磁性材料Fe、Co-Cr合金、及びNi-Fe合金の反応性イオンエッチング |
中谷功(金材技研) |
・新バイアス構造によるサブミクロントラック対応GMRヘッド |
大沢裕一(東芝)他 |
・積層フェリ (Co/Ru/Co)固定層を用いたスピンバルブ膜 |
川戸良昭(日立)他 |
・その場自然酸化法を用いた強磁性トンネル接合の作成 |
柘植久尚(NEC)他 |
1.では富士通の三浦氏がHDDの研究動向について述べ、磁気記録技術は総合技術であり、 多くの人がEmulationに参加することによって発展してきたことを紹介し、また、米国では転送速度向上の研究がなされており、記録密度向上重視の日本の研究動向とは異なることを指摘した。
2.では日立の細江氏が熱安定性に対する磁気異方性定数Ku、グレインサイズ及び初期結晶成長層の制御、keeper層の効果について報告し、Kuの測定精度の重要性が論議された。また、電通大の仲谷氏が長手/垂直の熱揺らぎに関して、粒子サイズの分布を考慮したシミュレーション結果を報告し、記録密度を増加させるには、粒子サイズの分布を小さくすることが重要であることを提示した。
3.では豊田工大の鈴木氏が、スピン波理論を用いた熱安定性のメカニズム解明のアプローチについて説明し、高密度記録を実現するには、マイクロ磁気的特性や構造の改良が重要であることを説明した。また東芝の田中氏が、非磁性SiO2マトリックス中にCoPt粒子を周期的に分散させた磁気記録媒体ではパーシャルイレージャーが改良され、低ノイズ特性を持つことを報告した。
4.では東北大の村岡氏が、2層膜垂直記録媒体に関するシミュレーションや実験結果により、Hcの分散や磁気ヘッドの磁気異方性定数Hkが熱安定性に影響することを報告した。また、日立の平山氏は単層垂直媒体の特性を説明し、角型比Mr/Msを1に近づけること及び磁性粒子を磁気的に孤立化させることが熱揺らぎには有効であることを指摘した。
5.パネルディスカッション
・東北大の村岡氏が、2層膜垂直磁気記録媒体/薄膜垂直ヘッドを用いて、600kbpi,0.5ミクロントラックピッチの記録が可能であることを提示した。
・AITの山川氏は、サーマルアスペリティや摩耗に強いと考えられる縦形のヨーク型GMRヘッドを提案した。
・NECの田上氏は、垂直記録実用化の課題について述べ、マージ型MRヘッドでの記録や特に垂直に適した信号処理方式の検討をすべきであることを提案した。
・日立の二本氏は、垂直/長手の磁気記録媒体の観点から、高密度記録には熱揺らぎの点で有利であり、垂直に最適な信号処理方式の検討が必要であることを指摘した。
・日立の青井氏は、磁気記録密度のトレンドに言及し垂直記録方式では、早い時期に100Gbits/in2のデモンストレーションが必要であることを提案した。
上記パネルディスカッションでは、全体的に、垂直磁気記録方式を力強く前進させようという意志表明が感じ取れた。
6.では、豊田工大の鈴木氏がSILの構成や超近接場のエバネッセント光ついての原理などについて説明し、光記録の技術がHDと光の結合した技術として出てくる可能性があること、また、MOの媒体をHDDの記録媒体として見ることが重要であること、光磁気の分野では転送速度を速めるため、「光を磁気記録で補助する」方向に進んでいることを指摘した。
7.では、NECの柳沢氏がコンタクト・ニアコンタクト方式の課題とそれらに対応する研究動向について紹介し、低スペーシング化と機械的信頼性技術に対する挑戦について述べた。続いて、富士通の植松氏が高密度を達成する高TPI化の位置決め検出方式、ピギーバップアクチュエータなどの対応技術についての重要性について説明した。
8.では金材技研の中谷氏が、RIE法のこれまでの試みや遷移金属 に有効なCO-NH3混合プラズマを用いたRIE法について説明し、今後の磁気デバイス開発技術として重要であることを指摘した。またNECの大橋氏はSCA(Surface-active sulfur Contained Additive)無添加浴からの電気メッキによりCo-Fe-Ni三元合金で〜2.1Tの高Bsで耐食性の優れた軟磁性材料について報告した。続いて、富士通の田河氏が、2次元の計算でもレラクタンスの適切な補正によって、狭トラックヘッドの渦電流を考慮した解析が可能であり、高周波特性を伸ばすには抵抗率の増大とヨーク長を減少させることが有効であることなどを報告した。
9.では、東芝の大沢氏がサブミクロントラック幅に向けたヘッド設計、製造プロセス、再生特性などを紹介し、ハード下置き・リードオーバレイ構造が特性的にも量産的にも優れていることを報告した。また、日立の川戸氏は、シミュレーションにより固定層(Co/Ru/Co)を用い、スピンバルブヘッドのアシンメトリーに関するMR素子の高さ依存性や再生特性の飽和が改善できること、実験的には熱安定性が優れていることを報告した。また、NECの柘植氏は、接合層のin-situ 成膜及び Alの純酸素自然酸化によるトンネルバリア形成の技術を用いて作製したAl/Fe/Al2O3/CoFe/Alのトンネル接合の特性を提示し、MR比10〜12%、規格化抵抗値は従来の報告値より2桁低い2.4x10-6Ωcmで磁気ヘッドに要求される値に近いことを報告した。
今回の研究会では、参加者の熱心な質疑応答が多数あり、各セッションの進行が遅れるなど時間を延長した討議が行われた。競合する光記録の動向を含め、示唆に富んだ発表内容や議論が多かったように思う。特に、第1日目のパネルディスカッションでは、22:00過ぎまで議論が続き、さらに、深夜まで参加者同士の熱心な議論が続いて、大いに盛り上がったことを付加えておきたい。
(松下電器・黒江章郎)
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