日 時:平成9年5月23日(金)13:30〜17:00
場 所:商工会館
参加者:77名
去る5月23日、当学会第21回総会に引き続き、第100回研究会「応用磁気のフロンティア」が商工会館において開催された。今回は、第100回という節目の研究会であり、学会の20年の歩みを振り返り、同時に応用磁気の先端分野の現状と展望を幅広く議論するための場として企画された総合的なレビュー中心の研究会であった。参加者は77名。レビューが中心であり参加者の興味が分散しないかと心配されたが、参加者数もまずまずで、質疑応答も活発で、大変有意義な会であった。本研究会における各講演題目と講師(敬称略)は以下の通りであった。
講演題目:
- 応用磁気の発展 対馬 立郎 (東邦大・前会長)
- 金属人工格子/磁性薄膜のフロンティア 猪俣浩一郎(東芝)
- 永久磁石のフロンティア 藤井 博信(広島大)
- 生体磁気のフロンティア 上野 照剛(東大)
- ストレージ技術のフロンティア 小川 清也(富士通)
対馬氏は、明治時代、日本に物理学を伝えたJ.A.Ewing博士以来の磁性研究の流れを振り返り、先人達がどんな時にどんな仕事をしたかなどの話をし、特に若い研究者への励ましを与えた。またこれまで応用磁気学会で行われてきた主要な研究分野とトピックスについて説明し、20年の歴史を振り返った。
猪俣氏は、磁性薄膜・表面・人工格子研究の歴史を概観した後、金属人工格子におけるGMRの発見に端を発するスピンと電荷の結合した伝導とその関連現象の研究を取り上げ、その現状と展望を紹介した。特にGMRに関連した伝導現象、強磁性トンネル接合、磁性体/半導体ハイブリット、ナノ構造磁性膜、スピントランジスタ、強磁性単一電子トランジスタ、スピンFET、などの現状と課題を具体的に説明した。
藤井氏は、7〜10年毎に新しい材料が開発されてきた永久磁石の歴史や永久磁石の基本的な特性を紹介した後、最近進展の著しい希土類磁石の高性能化の現状と展望などを分かり易く解説した。さらにナノ複合化磁石やMnを利用した磁石材料への期待についても話された。
上野氏は、磁気の生体作用、高感度SQUIDによる生体磁場の計測、磁気共鳴イメージング(MRI)などを軸として展開している最近の生体磁気研究の現状を紹介した。パルス磁場で局所的に神経を刺激するとどんな現象が起きるか?、磁場と血液凝固の関係など生体磁気関連以外の人にも大変興味のある話であった。High Tc SQUIDや磁気シールド、SQUID顕微鏡、生体磁気イメージングなどをめぐる課題と展望も話された。
小川氏は、磁気記録と光ディスクを中心としたストレージビジネスの現状を話した後、磁気ディスクと光磁気ディスクの発展の歴史と現状、それぞれにおける重要な要素技術や今後の課題と展望を紹介した。また「磁気記録/光ディスク相互に学ぶ」として、Solid Immersion Lens (SIL) を用いた光磁気ディスクの例を紹介した。最後に、マーケティング・技術両面から日本が世界で指導力を発揮できるためには、横並び意識を変革し、メーカ同志の競争と協創、産学(官)の緊密な連携が大切であることを訴えた。
(電総研、片山利一) |