国際・国内会議カレンダー l サイトマップ l お問い合わせ 
ホーム 学術講演会 研究会等 学会誌 情報コーナー 会員サービス 入会案内
研究会
過去の研究会 (一覧)
研究会資料投稿規程
研究会資料原稿の書き方
日本応用磁気学会第91回研究会
ナノ構造制御とプロセス
 
日 時:平成7年7月14日(金)
場 所:蔵前工業会館
参加者:51名

精細な磁気結合(逆に磁気絶縁)制御とそれを可能にする, よく定義されたナノメータースケールの構造を実現するプロ セッシングの問題を取り上げて,欧磁気材料・永久磁石材料に おける取り組み,ナノ領域の構造と組成の同定技術やナノスコ ピックな磁気構造観察技術の動向についてご講演をお願いし た.講演テーマは以下のとおりである.

I.軟質磁性材料
(1) 飲磁性薄膜のナ/構造 :島田 寛(東北大)
(2) Co系グラニュラー構造膜の磁気特性 :大沼繁弘(電磁研), 藤森啓安(東北大)
(3) 金属薄帯のナノ構造制御と軟磁気特性 :吉沢克仁(日立金属)
II.永久磁石材料
(1) ナノ構造永久磁石の展望 :岡田益男(東北大)
(2) Fe-B-Nd系ナノコンポジット磁石の組織制御と磁石特性 :広沢 哲(住持金)
(3) Nd-Fe-B系永久磁石のナノ構造と特性 :井上明久(東北大)
III.ナノ構造解析
(1) 分析電子顕微鏡法によるナノ構造解折 :坂東義雄(無機材研)
(2) 走査型プローブ顕微鏡によるナノ構造磁性体評価の技術動向 :保坂純男(日立)

I-(1)ではFe系薄膜の粒子の径が20nmより小さい側での グラニュラー構造の形成と軟磁性, 大きい側でのナノ領域の結 晶成長結晶構造と軟磁性について報告された.適切な熱処理 によってよい特性が実現されることが示された.特に後者では 製膜雰囲気の清浄度と最大結晶粒サイズとの関係,結晶配向成 長に関する磁性膜との下地層の表面エネルギー差の効果など興 味深い実験的考察を報告された.
I-(2)はCo基合金が高い自然共鳴周波数をもつこと, fcc構 造のものは軟磁性を示すことに着目した.Alとの合金化は低 温でfcc構造を安定化しグラニュラー化を促進し,反応性ス パッタ製膜によりas depositでCo-AI-0系グラニュラー構造 膜が得られた.磁気特性には粒界物質の組成と厚さが鷲となる ことを強調された.
I-(3)はナノ結晶飲磁性材料の草分けである.Fe-Cu-Nb-Si-B アモルファス金属を熱処理して最適なサイズのbcc Fe-Si結 晶粒と残存アモルファス相によるナノ構造を形成する.結晶粒 径(D)の磁気異方性(K)に対する効果は,ランダム異方性モデ ルではK D6となるが,実験的には HC\D2, mur\D-2 である ことからK\D2に近いという考えを述べられた.
II-(1)はナノ構造永久磁石材料のルーツ(二相分離磁石に求 められ,Fe-Cr-Co はその典型例), 交換スプリング磁石, 異方 性交換スプリング磁石のマイクロマグネティクス理論を紹介さ れた.異方性ナノコンポジット磁石の実現についてハード相を 一軸配向した多層薄膜磁石やニ相分離磁石の展望をされた.
II-(2)は(Fe3B or Fe2B)-Nd2Fe14B系のナノコンポジット磁 石についてナノ構造の形成と特徴を報告された.希土頬と棚素 の濃度一定でFeと小量の添加元素(Gaなど)を置換すると, 相構成を変えることなく結晶粒径を小さくすることができ,競 磁曲線の角型比が良くなり,BrとHCが向上する.結晶化過程 におけるGa, V, Crの添加効果を詳しく調べ, 結晶サイズを小 さくする効果に加えてFeとの合金化によって交換相互作用の 強さに直接影響を与えることを指摘された.
II-(3)は従来のNd-Fe-B磁石材料よりもさらにFe高濃度 城(≧90 at%)でアモルフナス相を残存させてナノ構造組織を 維持することにより,高い磁石特性(Br=1.28T,iHC=250 KA/m, (Bh)max=146 MJ/m3)が実現されたという報告である.ア モルファス相の生成範囲, ナノ結晶化過程, ナノ組織を詳しく 調べ, 約30nm以下のNd2Fe14B粒子が a-Fe粒子とアモル ファス相に取り囲まれており,NdzFeB粒子間隔が約100nm, a-Fe粒子とNd2Fe14B粒子間隔は0-10nmであることを示 された.
III-(1)では構造と組成を1:1 に対応付けるナノ組織分析法 としての分析電子頭微鏡技術の現状と動向を紹介された. TEM,EDS,EELS の組合せにより1原子層の元素同定が可能 であること,厚さ lnmの粒界層内の組成偏折の情報も得られ ることを示された.
III-(2)では走査プローブ顕微鏡による磁性体評価の技術動向 を紹介された.この目的には従来MFMが用いられているが, 分解館は0.1mumのオーダーであった.MFMの高分解能化の 方向としてnomcontact法と表面接触法とを示された.前者で は真空中動作によりプロープと試料表面の間隙10nmで80 nmの分解能を得た.後者では原子間力の影轡を除くためcontact 状態でプロープを加振する方法を開発された.AC成分で 磁気情報を取り,DC成分で表面形状の情報を得ることができ るので発展が期待される.

「ナノテクノロジー」や「サブナノテクノロジー」など予算要 求のテクニカルタームがたちまちにして学問的に市民権を得る ほど最近の科学・工学の発展はラジカルである.ブロセッシン グは勘と経験の時代を卒業し,磁性体と言わず広く物質全般に ついて,構造も組成もサイズもよく定義された新奇な構造を賦 与し,新物性や&れた特性や機能を引き出すナノプロセッシン グ時代に入ったことを本研究会で実感した.

(名工大 奥田高士)