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日本応用磁気学会第90回研究会 第21回超伝導マグネティクス専門研究会
高温超伝導の新しい展開をめざして
 
日 時:平成7年5月 25日(木)
場 所:商工会館
参加者:56名

今回の研究会は,発見以来8年を経過した高温超伝導体研究 の現状を概観することを目的として開かれた.テーマは以下のとおりである.

  1. 酸化物超伝導体研究の最近の展開
    -実用化への展望-
    腰塚直己(超電研)
  2. 高温超伝導体の物理
    -電荷とスピンの絡み合いと新技術の展望-
    前川禎通(名大工)
  3. 酸化物成膜における新しい試み
    森下忠隆(超伝研)
  4. MOCVD法により作製した高品質Bi-2223超伝導薄膜:
    AFMによる表面観察と成長横構
    透蕗和弘(亀総研)
  5. 磁束量子の直接観察
    原田 研(日立)

1は各種高温超伝導体の物性からテープ線材などの応用まで の幅広いレビューであった.各物質の利点や問題点が譲論され た.特に比較的新しい材料である水鏡系や,Nd系123型超 伝導体などが詳しく紹介された.強い異方性や粒界弱結合の存在 などが実用化への障害となってはいるものの,単結晶作製法や 線材化技術の着実な進歩により,いくつかの応用分野で既に試 作の段階に達していることが紹介された.
2は"t-j モデル"や"電荷とスピンの分離"など高温超伝導 体を議論するときに使われる諸概念がわかりやすく説明され, 極めて教育的な講演であった.なるほどそういうことだったの かと改めて得心された方が多かったようだ.また高温超伝導体 においては, 磁気的相互作用が引力の起源となっている可能性 が大きく,その場合クーバー対の対称性はd波になること, お よび最近の多くの実験事実は確かにd波超伝導を支持してい るように見えること,などが紹介された.
3では盛化物超伝導体という立場を少し広げて,醸化物一般 の成膜法が講論された.金属や半母体の場合と比べて酵素を含 む3元系あるいは4元系の物質を成膜することのむずかしさ と面白さが紹介された.0+イオンを用いる独特の方法を始め とする新しい成膜法および評価方法が紹介された.
4では発表者らがMOCVD法で初めて成功した単相Bi-2223 相薄膜を材料にして,AFM による表面観察の結果が報 告された.特に基板の(00I)や(110)面からのオフ角度によっ て成長機構が変わってくることが紹介された.
5は日立外村グループの独壇場となっているローレンッ電子 顕微鏡法による NbおよびBi系高温超伝導体における磁束量 子の直接観察法の紹介であった.いつもながら見事な映像を見 せていただいた.特に,極性の違う磁束量子が対消滅する様子 が動画でとらえられているのは興味深かった.そのほか,試料 にステップがあるときにはその端がー種のピンニングセンター になることや, Bi系高温超伝母体の場合,従来予想されていた より高温まで磁束量子が観測されることなどが報告された.

今回の研究会は午前中に総会が開かれた後を受けての半日だ けの研究会であった.したがって,膨大な高温超伝導体研究の 全貌をカバーするというわけにはいかなかった.しかし特徴あ る講演者達の発表によって,それぞれの分野での最新の生き生 きとした活動をうかがうことのできる研究会であったと思う. 出席者の多くは理伝母を専門としていない方々であったと思わ れるが,盛んに質問が出て時間が足りないほどであった.非専 門の方々に高温超伝母研究の現状を概観していただくという第 ーの目的は蓮せられたのではないかと思われる.

(超電研:中尾公一)