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巨大磁気抵抗効果の展望
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日 時:平成7年1月26日-27日
場 所:浜名荘
参加者:126名
今回のー泊研究会は磁性多層膜の専門研究会と共催で行っ た.初日に巨大磁気抵抗効果(GMR)の総論とGMR材料(プロ グラム1-6)と磁気ヘッドへの応用(7-10)をテーマにした. そして,夜にパネルディスカッション(11)を行った.また.第 二日目はGMRの基礎的諸問題(12,13), 最近のトピックス (14-16),トンネル接合・新デバイス(17, 18)をテーマにして ご講演をお願いした.講演テーマは以下の通りである.
- 巨大磁気抵抗効果研究の最近の進展
新庄輝也(京大)
- 誘導フェリ磁性による人工格子の高感度MR特性
荒木 悟,宮内大助, 篠浦 治, 成宮義和(TDK)
- アモルファスCoFeB/Cu/Coサンドイッチ膜の巨大磁気抵抗効果
神保睦子(大同工大),小宮山和弥, 綱島 滋(名大)
- ハード膜を用いたスピンバルブ多層膜のMR特性
榊間 博・里見三男,川分康博・入江庸介(松下)
- CoNiFe/CuおよびNiFe/Agスピンバルブ膜のGMR
北出康博,菊池英幸・岸 均,小田切充,小林和雄(富士通)
- COFeスピンバルブGMRの諸特性
岩崎仁志,・上口裕二・佐橋政司(東芝)
- Spin-Valve Materials and Heads
V.S.Speriosu, B.A.Gurney, C.Tsang, R.E.Fontana,
D.E.Heim, T.Lin and M.L Williams(IBM)
- 高感度TWIN CAPPED GMR
河内山彰,宮内貞一(ソニー)
- 垂直磁気記録用ヨークタィプGMRヘッドの磁化解析
山本英文,石原邦彦(NEC)
- Ni0を用いたスピンバルプ型ヘッド
川辺 隆, 星山裕之, 浜川佳弘,鈴木良夫, 府山盛明(日立)
- GMRヘッドの課題と展望(パネルディスカッション)
パネリスト:Dr.Speriosu,Dr.Daughton,
宮内貞一(ソニー),山本英文(NEC),
荒木 倍(TDK),欄間 博(松下),
小林和雄(富士通),岩崎仁志(東芝),
川辺 隆(日立)
- 磁性多層膜:新しい物質,電子構造および磁気抵抗効果
井上順一郎(名大)
- 輸送効果測定でわかるGMRに於ける散乱特性
佐藤英行(都立大)
- Mn醸化物における磁場誘起絶線体 金属転移
富岡康秀,十倉好紀 (JRCAT)
- Co-Al-O グラニュラ-合金薄膜におけるトンネル型巨大磁気抵抗効果
三谷誠司,藤森啓安(東北大), 大沼繋弘(電磁研)
- 磁性体/半4体人工格子の交換結合とMR効果
猪俣浩一郎,油頃圭一郎・斉藤好昭(東芝)
- GMR Random Access Memory and Magnetic Field Sensors
J.M.Daughton(Nonvolatilc EIectronics lnc.)
- スピントンネル磁気抵抗効果
宮崎照宜・手東展規(東北大)
1.では巨大磁気抵抗効果の最近の研究を紹介していただき, さらに微細加工基坂を利用した新しい構造の磁性薄膜を作成す る方法が示され,CIPとCPPの中間のCAP法と命名された.
2.ではCuバoにu/NiFe人工格子により磁場分解能0.5%/0e のMR特性が得られ,藷Sフェリ磁性による高感度MR特性 が示された.
3.では歌磁気特性にはれたアモルファスCoFeB を強磁性層としたCoFeB/Cu/Coサンドイッチ膜において磁 界感度が結晶質のNiFeスピンバルプ膜より大きいことが示さ れた.
4.では耐食性にはれたCopt硬質磁性膜をハード層に用 いたスビンバルブ型MR膜が示され,反強磁性膜を用いたもの と同程度の磁界感度が報告された.
5.ではCoNiFe膜をスピ ンバルプ膜へ適用した結果,HC=60cで6.8%のMR特性が得 られ,素子化するとヒステリシスやバルクハウゼンジャンプの 無い線形動作をすることが示された.
6.では(111)配向 Co90Fe10/Cuスピンバルブ膜において困難軸方向にバイアス磁 界を加えてー弱外部磁場で磁化回転させると最大HC=1.50e, 1.0%/0cのMR特性を示すことが示された.
7.ではNiFe/ cu/Co/FeMnスピンバルプセンサーにおいて従来のAMRセ ンサーに比べ約3倍のシグナルを得たことが示され,耐熱性と 耐食性の問題点が報告された.
8.では強磁性膜に[Ni/Fe/Cu] の上下をNiFe膜で挟み込んだ TWIN CAPPED 膜において NiFe/CuのMR素子に比べて約4倍の出力が得られることが 示された.
9.では垂直磁気記録ヨークタイプGMRヘッドの磁 化解析を行い,磁性層間の静磁結合及びセンス電流磁界の影響 が報告された.
10.では磁化固定層にFeMnよりも耐熱・耐久 性に優れたNi0を用いたスピンバルブ型ヘッドの弧立波出力 が従来のMRヘッドに比べて約4倍大きいことが示された.
ここで初日の講演は終了し,夕食のあと,パネルディスカッ ションが英語で行われた.パネラー9名が約3分間の発表を 行ってから磁気ヘッドの実用化へ向けての問題点として,主と してGMR膜の熱的安定性,耐食性,エレクトロマイグレー ション, バルクハウゼンノイズの4点について議論した.
翌日は9時から開始され,12.では最近見出されているGMRを示 す新物質とスピントランジスターについての考え方が理論的立場から解説された.
13.ではGMRを示す試料の熱伝導度、熱 電能及びホール効果の磁場依存性が測定され,スピンに依存す る散乱が界面で起きるのか,磁性届の内部全体で起きるのか が考察された.
14.ではべロプスカイト型Mn醸化吻 Prd1-xCaxMn03において磁場誘起絶縁体−金属転移を起こし, 低温では抵抗率の変化が10^10倍以上になることが示された.
15.ではCo-Al-0グラニュラー合金薄膜においてスピン依存 トンネル効果によるGMRが見出されたことが報告された.
16.では磁性体/半碑体(Fe/Si人工格子膜において半導体ス ベーサによる振動型交換結合が観測され, また交換結合の符号 が温度によって変化することが示された.
17.ではGMRによ る磁場センサーへの適用とランダムアクセスメモリーへの応用 (MRメモリー)についての報告がなされた.
18.ではFe/ AI208/Fe接合のスピントンネル磁気抵抗効果が室温で 18% 以上となることが報告され,Feの分極率から期待される値に 近いことが示された.
今回の研究会は「磁性多層膜の新しい機能」専門研究会との 共催で行い,参加者は126名にのぼり大変盛況であった.米国 のDr.SperiosuとDr.Daughtomこ講演を依頼し,米国の研究 を紹介していただき,大変有意義であった.初日はGMRの磁 気ヘッドへの実用化に焦点が絞られ・活発な議論が交わされ た.パネルディスカッションは英語であったが,パネラーの 方々に無理をいって大変貴重なデータを示していただいたおか げで問題点が絞られた.また司会者(鈴木孝雄氏(IBM)と田上 勝道氏(NEC)の名リードで大変白熱した議論となった.また, 翌日はGMRの基礎に重点をおいて講演をしていただき大変勉 強になった.GMRは基礎的な物理の問題と高密度記録への応 用という問題が同居する,研究会としてまことに適当なテーマ であったと思われる.今回の企画がGMRの実用化へのステッ プとなることを期待したい.
(名大:松井正顕)
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