第31回「磁性多層膜の新しい機能」専門研究会

日時:1998年5月19日(火) 14:00-18:00
場所:京都大学化学研究所 大会議室
講演題目: 「微小磁性体の作成、磁性と伝導性」
小野輝男 (京大,慶應大)
「超微細磁性ドットアレーの作成技術と磁気特性」
藤田淳一 (NEC)
「GMR材料の微細修飾」
前田篤志 (三洋電機)


 今回は、文部省科学研究費重点領域研究「微小領域の磁性と伝導」のワークショップを兼ねて開催され、参加者は約30名であった。重点領域研究費によって京都大学化学研究所に設置された電子ビーム描画装置を披露することも目的としたため、講演の内容を微細加工技術の磁性体への応用に絞ってプログラムが組まれた。小野は非結合型GMRを示す磁性2層膜から幅0.5umの単一の細線を作成し、電気抵抗測定から磁壁の移動が観測出来ることを示した。移動が始まる磁場について、および移動の速さについての実験結果を紹介し、この方法が磁壁移動のメカニズムの解明に有効であることを説明した。
 藤田は磁性金属を微細加工する際の技術的問題点となるレジスト、あるいは電子線の散乱などについて解説した。ドットとしては径15nm、ラインとしては幅7nm程度が現在の限度である。鉄のドットについて、直径が均一なものと2種類が交互にある試料を作成し、磁気的性質の違いを紹介した。前田は今後の磁気記録における微細加工の必要性について概説した。微細Vグルーブ上にCo/Cu人工格子を作製することによってMRが増大すること、更に微細な凹凸の効果を見るために基板上にCuマイクロクラスターを形成させた場合の結果などを述べた。
講演の終了後、装置の見学とビアパーティを行い、しばし討論と歓談をおこなった。

(京大化研 新庄 輝也)