第29回磁性多層膜の新しい機能専門研究会報告

日 時:1998年1月14日(水) 13:30-16:30
場 所:恵比寿会館
参加者:29名
講演題目: (1) 極微小光ビームスポットによる熱磁気記録過程のシミュレーション
兪 祥游,杉山 慎一,伴 好典,岩田 聡,綱島 滋 (名大)
(2) スピンSEMによる光磁気記録マークの観察
孝橋 照生,松山 秀生,小池 和幸,
宮本 治一,牛山 純子,田中 靖人 (日立)
粟野 博之 (日立マクセル)
村上 善照 (シャープ)
(3) Domain Wall Displacement Detection
白鳥 力,藤井 英一,宮岡 康之,穂積 靖 (キヤノン)


 標記専門研究会は,電気学会第13回超高密度光磁気記録調査専門委員会との共催にて開催された.

 (1)は0.1μmという極微小光ビームで光磁気記録を行なった場合の磁区の大きさのシミュレーションである.極微小光を用いることにより膜面方向の温度勾配が大きくなり,それにともなって記録条件が厳しくなる.その結果,希土類 rich Tb-Fe-Coでは微 小な磁区を記録できないことがあるが,遷移金属 rich Tb-Fe-Coでは反磁界が大きく,記録できることが示された.
 (2)はスピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)の原理紹介と,それを用いた光磁気記録媒体の磁区観察の報告があった.スピンSEMは,分解能が20nmで,膜厚や表面の平坦性に依存せず,スピンがx,y,zのどの方向を向いているかを識別できる.スピンS EMを用いて,ランド/グルーブ記録における磁区,下地層の荒さと磁区,磁気超解像(MSR)媒体の磁区の観察結果が示された.また,磁界変調記録した磁区を線分析し,磁壁がNeel磁壁的となっていることが示された.
 (3)は磁壁移動検出方式(Domain Wall Displacement Detection,DWDD)の原理と結果が示された.DWDDを用いると,0.075μmの磁区も検出できるが,0.1μmをきったあたりから,マークの欠落が見られるようになる.従来,rear processにともなうゴーストが問題であったが,再生時に磁界を印加することにより,ゴーストの発生を防ぐことができることが示された.また,1.5m/sの線速度で,NRZIランダム信号を記録し,最短マーク長0.12μmにおいて,ジッターが8ns(10%)であることも報告された.

 DWDDにおいて,1.5m/sの線速度でジッターが8nsecということは,距離に換算して1 2nm程度ということである.更なる高密度化に対しては,これを10nm以下にする必要があり,いかに正確に記録するかが鍵と思われる.

(三重大 小林 正)