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第25回サマースクール「応用磁気の基礎」報告
 今年で25回目を迎えたサマースクール「応用磁気の基礎」が8月1日(水)から3日(金)の3日間の日程で,昨年と同じ静岡県の湯河原厚生年金会館にて開催されました。受講者数は40名(内:学生15名)で,社会人の方でも入社後3年以内の方が18名と若手が大半を占めました。長引く不況の影響を受けて昨年より参加者は7名減少しました。また,大学の学年暦の変更や幾つかの企業の夏期休暇と重なったことなども影響しているようです。今回,初等磁気工学講座にも参加された方は8名でした。
  今年のプログラムは,第1日目に「磁気記録」二本氏(日立),「磁気物理の基礎」佐久間氏(日立金属),夜には懇談会を開催しました。第2日目は午前に「磁気抵抗効果とスピンエレクトロニクス」斎藤氏(東芝),「微少磁気計測」中川氏(日大),午後に「薄膜磁気ヘッド」金井氏(富士通),「永久磁石材料」杉本氏(東北大),さらに夜の企画として,毛利氏(名大)より「センサマグネティックスから生命水分子磁気学へ」と題して講話をいただきました。第3日目は午前に「高周波磁気デバイス」佐藤氏(信州大),「光磁気記録」粟野氏(日立マクセル),午後に「磁気記録シミュレーション技術」吉田氏(工学院大)で,昨年とほぼ同様のテーマで,磁気の基礎から応用まで幅広く学べる構成をとりました。
  講師の方々には広範囲にわたる基礎から応用までを,限られた講義時間内に,専門分野の異なる受講者にも十分理解できるように,できるだけ平易に講義していただきました。講義時間を多少超過して質問時間を十分に確保できないこともありましたが,どの講義でも活発な質疑応答があり,休憩時間にも講師の先生をつかまえて熱心に質問をする受講生が多く見られました。
  今年の講話はセンサマグネティックスの分野の第一人者である名古屋大学の毛利氏にMIセンサの開発を中心にお話していただきました。講話の始めにはゼロ磁歪のアモルファスワイヤーやMIセンサ等の実物の紹介があり,講義時間中には純水にミリガウス程度のパルス磁界を加えた後,電気抵抗率が刻々減少していく現象の実測があり,非常に興味深い内容でした。アンケート調査からも,講話の時間をもう少し延長して欲しかった等の意見が多くあり,好評であったことがうかがえました。氏がこれまでに開発・解明されてきた数々のデバイスや現象に行き着くには,新たな解決すべき課題や新しい材料との出合いから始まり,優れた観察力と洞察力に加え,先入観を捨て実測してみることが如何に大切かということが強く感じられました。現在の氏のキーワードは「ミリガウス磁気」で生体との関連を実験的に追求されており,9月の学術講演会でその第一報を出されるとのことで,今から非常に楽しみにしています。
  サマースクールは今回で25回目と歴史があり,内容的にも磁気の基礎から応用まで非常に充実したものになっています。また,その時々の最先端の話題を盛り込んだり,先駆的な研究者を迎えての講話などもあって,参加者の方々には非常に満足していただいています。若手技術者のみならず,各企業である程度実績を上げてこられた中堅の方々にとっても,ご専門以外の磁気関連の話に刺激を受けたり,基礎と応用を短期間で学び直すことで日頃の問題意識を考え直す上でも大変良い機会になると好評です。長引く不況の影響もあり,なかなか参加の機会が得られないという方,今をチャンスと捕らえて,是非ご参加ください。

(大分大 戸高孝)