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第23回サマースクール「応用磁気の基礎」報告
今年で23回目を迎えたサマースクール「応用磁気の基礎」が、7月14日(水)から16日(金)の三日間、昨年と同じ静岡県の湯河原厚生年金会館で開催されました。受講者数は45名(内、学生11名)を得、例年通り磁性関連の仕事に携わる若手技術者が大半でした。人数的には昨年には及ばず、長引く日本経済の低迷に影響された形となったようですが、若手技術者が短期間で幅広く応用磁気の基礎を学べ、また、若手同志の交流の場として、今年も有益な機会となったと思います。
今年のプログラムは、1日目に「応用磁気の基礎」毛利氏(名大)、「磁気記録」法橋氏(早大)、2日目に「磁気抵抗効果とそのデバイス」中谷氏(日立)、「微小磁気計測」小池氏(日立)、「磁気物理の基礎」藤井氏(広島大)、「シミュレーション技術」仲谷氏(電通大)、3日目に「薄膜磁気ヘッド」押木氏(富士通)、「永久磁石」田口氏(TDK)、「高周波デバイス」山口氏(東北大)と、昨年とほぼ同様の構成で、磁気の基礎から応用まで幅広く修得できるように構成されました。講師の方々には限られた講義時間にもかかわらず、専門分野の異なる受講者にも理解しやすいように、基礎から最先端のトピックスまで、平易に講義していただきました。また、世界初のテープ録音のクラシック音楽など普通ではなかなか聞けないソフトや、最新のデバイスや微小磁区観察の例、シミュレーション結果の動画表示なども効果的に織り交ぜていただくなど、若手の受講者にとっても、理解のしやすく興味深い講義にしていただけたと思います。質疑応答も活発で、例えば、技術革新の著しい磁気記録の関連などでは、記録ヘッドの高速化や熱揺らぎ問題についての緊張感のある議論が交わされるなど、受講者自身にも問題意識を持って参加されている姿勢が感じられる場面も多く見受けられました。
2日目の夜の企画として、今村氏(東ソー)から「光磁気記録の歴史と将来」と題した講話をいただきました。光磁気記録技術の第一人者として、光磁気記録が技術として、また、ビジネスとして辿ってきた足取りを平易に語ってくださり、アンケート結果からも好評であったことが伺えました。氏の指摘された点としては、「日本の光磁気」にはなったものの、「世界の光磁気」には程遠いという点でありました。光磁気記録を、それ自体で独立したデータストレージ技術として育成しビジネス化してきた日本に対して、HDDの磁気記録の記録密度を後継する技術として捕えている米国との違いを指摘され、最終的な世界標準をどちらが獲得するであろうか、若手技術者に問題意識を植え付けてくれたものと思います。とは言え、光磁気の技術者が日本に多くいることは、心強い点とのことでした。
サマースクールは毎年恒例となっており、講義の構成としても「応用磁気の基礎」という枠組みですので大きな変化はないのですが、内容的にはたいへん充実したものとなっております。若手技術者のみならず、もしも時間が許すのであれば、各企業である程度の実績を上げて来られた中堅の方々にとっても、磁気の全体を網羅する講師陣を毎年お迎えしておりますので、広く磁気の基礎と応用を短期間で学び直すことで頭を整理し、また、日頃の問題意識を考え直す機会としても、たいへん役に立つのではないかと思います。是非、参加されては如何でしょうか。
(NEC 石綿)