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日本応用磁気学会応用磁気セミナー報告
「ナノスケールで構造制御された磁性材料とその物性」
 
日時: 2001年12月7日(金)10:00〜16:45
場所: 蔵前工業会館
参加者: 52名
  1. 「ナノスケールで構造制御された磁性材料」
    大谷 義近(東北大)
      大谷氏は、本セミナの開催にあたり、ナノスケールで構造制御された磁性材料の物理的・応用的な側面を現状に照らし合わせ紹介するとともに、以後5名の講演者の発表内容を1.試料作製手法、2.物性測定手法(構造,磁気測定)の2つの区分で位置付けし、参加者に本セミナの聞きどころをわかり易く説明した。
  2. 「(Co,Fe)‐Pt規則合金微粒子の形成プロセスと硬質磁性」
    島田 寛(東北大)
      島田氏は、年々激しさを増す記録密度の向上を鑑み、規則相(L10)形成により大きな磁気異方性を発現するため次世代のナノ結晶記録媒体として期待される「(Co,Fe)‐Pt系グラニュラ膜」の「秩序性(規則相形成)の低温制御」・「ナノ粒子の孤立化」に関して講演者本人の研究成果を中心に紹介した。講演前半においては、1.Bi下地層、2.低融点元素の添加、3.侵入型元素の添加を利用する手法、後半では1.Fe/Pt積層膜による拡散効果、2.Fe元素に非固溶であり低い表面エネルギを持つAg元素の添加効果などを利用した手法による「二次元的に配列したFePt、CoPt規則合金の微粒子」の実現に関し説明した。
  3. 「微細加工を用いた微小磁性体作製と物性」
    小野 輝男(大阪大)
      小野氏は、急速に進展する「微細加工技術」と「製膜技術」が、従来困難であった磁性体の構造制御をナノスケールまで実現可能とし、ひいては微小磁性体の基礎物性ならびにその応用について新境地を開く可能性について説明した。具体的には、「光リソグラフィ」・「集束イオンビーム加工」などの微細加工技術を紹介した後、微細加工技術の応用例として「V字溝基板上の3次元人工格子の巨大磁気抵抗効果」、「巨大磁気抵抗効果を利用した磁区形成・磁壁移動観察」など講演者自らの2,3の研究を説明すると共に、将来における微細加工技術を駆使した基礎研究・新デバイスの開発についても言及した。
  4. 「ナノ結晶・ナノグラニュラー磁性材料の構造と磁気特性」
    宝野 和博(物材機構)
      宝野氏は、まず磁性材料を「ナノスケールで構造制御する」ことにより 様々な優れた磁気特性を同時に発現できる事について説明した。引き続き、代表的なナノ磁性材料である 1.ナノ結晶軟磁性材料、2.ナノコンポジット磁石、3.ナノグラニュラー薄膜の3種類の材料に的を絞り、それら材料の磁気特性が既に充分検討されている一方、その構造制御のメカニズム、例えば「自己組織化における添加元素の役割」などをTEM観察などによる現状の手法のみで解明することに限界があることを指摘し、講演者らが開発した3DAP(3次元アトムプローブ)による新しい組織観察の有効性、ひいては「自己組織化のメカニズム」を理解したうえでの「新ナノ磁性材料」の開発展開について紹介した。
  5. 「ガスデポジションによるナノ結晶磁性材料
          −軟磁性材料,ナノコンポジット磁石への応用−」
    喜多 英治(筑波大)
      喜多氏は、まず1990年にHerzerが整理したランダムな軟磁性材料における保磁力と結晶粒径の関係を例にあげ、ナノオーダにおける磁性材料の「ランダム磁気異方性モデル」などナノ磁性材料における基礎的な理論を説明した。引き続き、粒子サイズの整った超微粒子の生成後、集合化してナノ結晶化する「ガスデポジション法」を1.構造・結晶粒径の制御法、2.酸化の抑制法など、最新の手法を織り交ぜ説明した後、現状における応用例として、ナノグラニュラー材料・ナノコンポジット磁石などの磁性材料の作製と共に、微小アクチュエータ用PZT微粒子厚膜の開発などもあわせて紹介した。
  6. 「ナノグラニュラー磁性薄膜とその応用
          −軟磁性材料,磁気抵抗材料に向けて−」
    大沼 繁弘(電磁研)
      大沼氏は、「ナノスケールで構造制御された磁性材料」のテーマに非固溶系である「ナノグラニュラー磁性膜」を取り上げ、そのグラニュラー膜に含まれる絶縁体の濃度を制御することにより、例えば1. 低濃度側:150 Oeの異方性磁界で一軸制御されたCo-Zr-O膜において1 GHzを超える「高周波用軟磁性薄膜」を実現、2. 高濃度側:(FeCo)-Mg-Fで13.3 %のMR比を有する「GMR用磁性薄膜」の実現など、講演者自らの研究報告を中心に説明した。加えて、これらの材料の応用例として、「GHz帯薄膜インダクタ」・「磁気シールド」・「高感度磁気センサ」を紹介し、「ナノグラニュラー磁性膜」の今後の展開についても言及した。

本セミナは、「ナノスケールによる構造制御」という磁性材料の多領域にわたるトッピクスを、材料創製(熱力学的手法・微細加工)、構造解析、具体的な応用例について各講師の方々に基礎的な面から最先端の内容までわかり易く解説していただいた。セミナ当日は大学院生を含む50名以上の出席者と講師の間で時間を延長して活発な議論が交わされた。

(長崎大 中野正基)