第23回 光スピニクス専門研究会報告

「酸化物透明結晶」


日 時: 1998年12月10日(木) 14:00-17:00
場 所: 東京工業大学 電気情報系会議室
参加者: 15名


講演題目:

1)「PLD法によるCo2+:DyIG膜の作製と磁気光学特性 石井紀彦(NHK)
2)透明酸化物半導体の創製 川副博司(東工大)



 光学的に透明になり得、かつ電気的には絶縁性から超伝導性まで示し得るという酸化物の一大特長を生かして、光と磁気および光と電子の相互作用を利用したデバイスを開発することは、酸化物結晶に大きな市場を開く可能性を示している魅力あるテーマである。そこで、今回の研究会は、透明酸化物の結晶成長および半導体化に関する話題を取り上げた。
 石井氏は、組成転写性の良いPLD(Pulsed Laser Deposition)法−レーザーアブレーションとも呼ぶ−を用いて、(Bi;Dy)(Co,Ge;Fe)ガーネット膜を作製した。光磁気記録材料であるBi置換磁性ガーネットの可視域での透明性に注目し、可視域に(Bi)によるファラデー回転と(Co)によるそれとを逆極性で持たせることを可能とした。これらを用いた膜の多層化は波長多重記録媒体の設計に自由度を与えるものであろう。今後、波長多重記録媒体としての記録実験に期待したい。
 川副氏は、透明酸化物に高い導電性を与えるために、同氏が構築した指導原理を概説された。次いで、イオン注入によって易動度の高いn型半導体を、不純物ドープによって従来は不可能であったP型半導体を作製した例を報告された。さらに二種類の透明酸化物を用いて実際にPN接合を形成したホットデータ、および一種類の透明酸化物を用いてPN接合を形成できる見通しが得られたことを提示され、太陽電池や(光)トランジスターを酸化物で作製する夢の実現可能性が高まりつつあることを話された。
 奇しくもお二人の製膜法が同様であったため、講演後の自由討論ではPLD法の長所・短所とその可能性などに関して、また酸化物を用いた別の新たな電子材料(例:磁性半導体)の開発が提案されていることなどについて、熱心な討論が行われた。
(世話人:東工大 阿部正紀、NHK 河村紀一)