第19回 光スピニクス専門研究会報告
日 時: | 平成10年4月21日(火)14:00〜17:00 |
場 所: | 東京工業大学(大岡山)南III号館2階会議室 |
参加者: | 16名 |
講演題目:
「Si半導体表面のSHG観測とその応用」 | 原市 聡(電総研) |
「Fe/Au人工格子の非線形磁気光学効果」 | 佐藤勝昭(農工大) |
今回は、磁性体の光学的評価に関する最近の話題を取り上げて研究会が行われた。最近各方面で,表面・界面における非線形光学現象の敏感性が注目され,薄膜の表面・界面の評価手段として第2次高調波(SHG)を利用する試みがなされている。
原市氏は、半導体プロセスにおけるSi表面の敏感なモニタという位置づけで表面SHGの利用を報告した。Si(111)表面へのCl2とXeF2の吸着を表面SHGの偏光成分の対称性で評価すると表面吸着元素は異なる元素配列をとっていると解釈できる実験結果を示した。また、励起光に短パルスレーザを用いてその吸着過程を実時間で観測する試みについて述べた。
佐藤氏は、磁性体の表面や界面における対称性の破れに敏感な非線形磁気光学効果について述べた。非線形光学の現象論的な波動方程式の展開から出発して、Rasingらの観測したさまざまの磁気SHGの実験結果を紹介した。さらに佐藤の実験したFe(15ML)/Au(15ML)の多層膜の磁気SHGでは典型的な4回対称の方位角依存性のパターンが観測され、電気四重極子まで考えた解析で定性的に説明された。この物質の非線形縦カー回転角は3度という大きな値であった。ちなみに線形カー回転角は0.2度である。また、垂直反射に近い条件で縦カー効果の観測が出来るので、面内磁化の観測には好都合なことが示された。
参加者が少人数であったにもかかわらず活発な質疑応答が交わされた。今後、磁性多層膜表面のより詳細な評価や磁気光学効果の高空間分解能測定による磁区や磁壁の3次元的解析などの分野にSHGの有望性を感じとった研究会であった。
(NTT 杉本直登、NHK 河村紀一)