第27回磁性多層膜の新しい機能専門研究会,第16回光スピニクス専門研究会報告
開催期日: | 1997年10月25日(土) 13:00-18:00 |
開催場所: | 駿河台日本大学理工学部1号館 |
参加者: | 51名 |
講演題目
今回は10月28−31日に山形で開催されたMORIS/ISOM
'97の関連研究会 "International Workshop on Hyper MO
Storage" として,表記の2専門研究会と電気学会:第12回超高密度光磁気記録調査専門委員会,日本大学理工学部先端材料科学センターとの共催にて開催された.開催日が土曜日になってしまったにもかかわらず,多くの参加
者に恵まれ,海外の基礎的な最新の研究をじっくり聞くことができた。すべてなんらかの意味で光磁気記録に関わって役立つ話であり,討論も大いに盛り上がった.
(1)はLiTaO3薄板を用いた2次高調波発生(SHG)により,光波長425
nmのスキャナー(偏向素子)に応用する研究である.まだ効率は低いが,長寿命のGaN青色半導体レーザが発表されて,青色光源光ディスクが現実のものとなってきている状況でもあり,今後このような多機能光源の開発は重要となっている. (2)は広い視野をもつ偏光顕微鏡と高い解像力をもつ磁気力顕微鏡を一体化した装置の紹介である.Co/Pd多層膜などの磁壁移動を追いかけた結果が報告されたが,使い勝手の良い実用的手法といえる.
(3)はタイトルからもわかるように,電子デバイスにおいて,磁性の源であるスピンの重要性に焦点をあてた話であった.M.
JohnsonのSpin Transistorや発表者のグループが手がけているSPICE
(Spin Polarised Injection Current Emitter)など幅広く解説してもらった.
(4)は最近注目されている非線型磁気光学効果の報告である.90度もの巨大な磁気光学回転角も生じるとのことであった.反転対称性のくずれる界面でしか生じないため,信号量は極微でメモリーに直結するものではないが,界面の状態を調べる有力な手段として今後の展開が楽しみである.
(5)は0.5 Tまでの磁界を印加しながら磁区を直接観察できる透過型電子顕微鏡の話である.パーマロイや面内磁気記録膜,光磁気記録用Pt/Co垂直磁化膜が紹介され,鮮明な画像を示しながら単磁区に近い領域での磁区状態が議論された.
(6)は面内および垂直磁気記録で,超常磁性の壁を乗り越えて50
Gb/in2を達成するための展望が話された.厚みで単磁区の体積を稼ぐのと一軸異方性を大きくする方向性が示され,同じ垂直磁化膜を用いる光磁気記録の高密度化の可能性も示唆するものと勝手に解釈し,大いに勇気つけられた.
(ソニー 金子正彦)