日本応用磁気学会第98回研究会
第10回 光スピニクス専門研究会
第22回 磁性多層膜の新しい機能専門研究会
「光と磁気の新しい流れ」
DVDを超えるMO技術をめざして
日時: | 1997年1月30日(木)、31日(金)
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場所: | 湯河原厚生年金会館
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参加者: | 106名
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昨年発表された7GB-MOを実現するための最新の光磁気記録技術を中心にし、光ディスクの国際規格と市場展開、競合光ディスクの最新技術、高密度MO技術、青色レーザの開発動向、SNOM(Scanning Near field Optical Microscopy)や非線形磁気光学効果など最新技術の話題についてご講演をお願いした。講演テーマは以下のとおりである。
講演題目:
−30日(木)−
- 光磁気ディスクの現状と展望
(1)ストレージにおける光磁気ディスクの位置付けと市場展開
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太田憲雄(日立マクセル)
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(2)次世代光磁気ディスクの高密度化技術
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金子正彦(ソニー)
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- 7ギガを目指すMO技術
(1)7G-光磁気ディスク装置の要素技術
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虎沢研示(サンヨー)
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(2)静磁結合型磁気的超解像媒体の記録再生特性
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広兼順司、高橋明(シャープ)
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(3)光磁気ディスク装置の特長とその利用方法
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二俣彰男(富士通)
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- 競合技術の現状−材料・コンセプト・規格と今後の展望−
(1)相変化ディスク技術の現状と将来展望?CD-RW, DVD-RAMを中心にして
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横森 清(リコー)
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(2)CD-Rの発展とDVD-Rへの展開
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浜田恵美子(太陽誘電)
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−31日(金)−
- 次世代高密度MO技術
(1)磁気超解像LIMDOW光磁気ディスク
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藤井善夫、徳永隆志、山田康一(三菱電機)
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(2)Solid Immersion Lens Near Field Optical Approach for High Density Optical Recording
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T.Suzuki, P.Glijer and B.Terris*.(豊田工大、*IBMアルマデン研究所)
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(3)波長多重再生による三次元光磁気記録
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中川活二、島崎勝輔*、伊藤彰義、太田憲雄*(日大、*:日立マクセル)
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(4)短波長光磁気記録材料
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綱島滋、岩田聡、兪祥游(名大工)
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(5)光磁気用集積光ピックアップ
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竹内繁騎、堀之内昇吾(九州松下)
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- 最新の光技術とMOのさらなる高密度化をめざして
(1)青色レーザの現状
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中村修二(日亜化学)
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(2)近接場光学による局所物性評価と超光密度光記録の可能性
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大津元一(東工大)
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(3)非線形磁気光学効果
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佐藤勝昭(農工大)
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1.(1)では現在の光ディスク市場において3.5インチMOディスクを中心に着実に普及し、95年からMDとCD-R(Recordable)の市場で爆発的な立ち上がりを見せていることが報告され、今後のリムーバブルのあり方と共に昨年発表されたMO7のコンセプトが示された。(2)では、このようなトレンドを支える光磁気ディスクの高密度化技術において基板の厚さがヘッド?媒体間に関わるトレランスを決定していることが述べられ、DVD-ROMの容量を超える媒体を実現していくための必要条件が示された。
2.では7GBMOの要素技術である、MSR(Magnetically induced Super Resolution)技術、光パルス磁界変調記録技術、光学的超解像技術、光パルス再生技術、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)技術、ランドグルーブ記録再生技術について現状とその可能性について報告され、これらの技術の集大成として片面6?9GBのMOディスクが実現可能であることが報告された。また、静磁結合CAD(Center Aperture Detection)型MSRで再生層膜厚を厚くすることにより狭トラックピッチ時のクロストークを低減できることが報告された。一方、記録装置設計の立場で考えたとき、サーボ帯域をどのように設定して粗動、微動に対応するかという点に関して報告された。
3.(1)ではCD-RW(Rewritable)の話題を中心として、Ag-In-Sb-Te混相記録層を用いることにより広範囲な線速度域において安定な記録再生が可能となったこと、高密度DVD-RAMの記録再生への有効性を示した。繰り返し記録再生と反射率の低さが課題である。(2)ではWOメディア(CD-R)の先駆的立場から、その潜在市場の大きさが示され、DVD-Rも含めて今後の発展が期待できる。記録材料として色素を使っていることから、他の光ディスク材料に比べて光源波長の選択性が急峻なため、今後期待される光源の短波長化に対しては検討が必要である。
4.では7GBMOの次の世代までにらんだ高密度化技術について報告された。(1)では光変調オーバーライトMSR媒体においてFAD(Front Aperture Detection)型MSR、RAD(Rear Aperture Detection)型MSRの比較検討し、ダブルマスクRAD型MSRが有望であることが報告された。(2)ではセミコンタクト型ヘッドの可能性として、光学ヘッドとしてSIL(Solid Immersion Lens)を組み込んで磁気ディスク用浮上ヘッド同様のスライダを設計し、マーク長0.36um、線速度1.25m/secで記録実験を行い、MFM(Magnetic Force Microscopy)でドメイン解析を行いCNR43dBが得られたと報告した。(3)では多値記録におけるS/N劣化分を波長多重読み出しを行うことにより補うもので、記録層にTbFeCoを用いて、今回は680nmと780nmの波長を用いて最大12.5dBのSN比改善を報告した。(4)では短波長レーザの開発が進む中、 磁気超解像技術の利用を考えると、GdFeCo再生層が短波長域でも有望であると報告した。また、ブルー領域で通常方式の媒体を構築することを考えたとき、期待される材料としてPt/Co、NdGd/FeCo、Tb/Bi/FeCoの多層膜、Mn化合物などの報告があった。(5)では実用化された光磁気用集積化ヘッドに使われたラミネートプリズムの設計・作製プロセス、特性を報告し、会場ではこれをマウントしたモジュールを回覧した。
5.(1)では、今光源の分野ではもっともホットな話題であるが、GaN系の青色LED発光と青色レーザ発振に至ったまでの実験結果が報告され、現状室温CW1.5mWで連続35時間程度まで延命しているとの報告があり、会場では400nmレーザの点灯も実演された。(2)では、近接場の考え方と現状技術の報告がされた後、記録装置化技術として高感度プローブ、高感度記録媒体、高速走査の各要素技術についての進行状況が報告された。(3)では、磁性材料表面での磁化状態を観察する手段として、非線形光の磁気光学効果を用いることにより高感度に観察できることが実験結果と共に報告された。
なお、第1日は夕食後パネルセッション形式で「次世代光磁気ディスクはどうあるべきか」と題して研究の進捗状況と規格化に向けての動き、市場動向などについて踏み込んだ意見が交わされた。
今回は、書き換え型あるいは追記型の光ディスクが数多く発表された後の開催であったため、本命は何か、棲み分けはどうするかなどに関心が集まった。しかし、結果的には、光磁気記録媒体の基本的な物理特性の素性の良さがクローズアップされた形となり、今年詳細が発表されるであろう次世代MO媒体への期待がさらに高まった。今後ますます高度化されるマルチメディア社会にあって、可搬型メディアとして光ディスクの果たす役割は大きい。次世代MO媒体には、単なるコンピュータアーカイブ媒体にとどまることなく、ポストフロッピーディスクとして市民権を得てほしい。
(NHK技研 河村紀一)