第8回 光スピニクス専門研究会報告

「光磁気記録における高密度化のための新展開」
-3次元記録,波長多重読み出し-


日 時: 平成8年6月12日(水)13:30〜17:00
場 所: 日本橋柳屋ビル B1F 桜会議室
参加者: 17名

講演題目:

1)"Recent Developments in Magneto-optical recording" 鈴木孝雄(豊田工大)
2)「光磁気記録の3次元記録への展開」 島崎勝輔(日立マクセル)
3)「多値光磁気記録情報の波長多重再生」 中川活二(日大)

 鈴木氏(豊田工大)の講演は,4月にサンノゼで行なわれたNSIC/OIDAのワークショップ及びオランダで行なわれたMORIS'96の内容を中心に最近の光磁気記録全体を概観するものであった.光エレクトロニクス産業全体及び磁気記録を含めた記録産業全体における光磁気記録の位置づけと将来予測が具体的な数字を交えながら紹介された.また,MORIS'96で氏が特に注目した講演として,SHG光のカー回転角の表面磁化状態による異常現象,CeSbの90度にも及ぶ巨大カー回転角,MSRを用いた0.2μmの微小マークの形成等が紹介された.さらに磁気記録と比較しながらこれからの光磁気記録開発のありかたについて氏の見解を示した.
 島崎氏(日立マクセル)の講演は,MOディスクの記録密度の増大を目的に行なった多値記録方式に関するものであった.始めに磁気的挙動の異なる2つの光磁気記録層を積層した媒体では,磁場変調により4状態の記録が可能であることを示した.また,この方式は従来の2値記録と同じ大きさの記録マークで記録密度を2倍に向上できること,磁界変調記録の特徴であるダイレクトオーバーライトが可能であること等の利点を示した.次に本方式の当初の問題点であった大きな記録磁界を,第2記録層の構成をGdTbFeCo/TbFeCoとすることにより,従来方式と同等な大きさまで低減できたことについて紹介した.最後に書き込み光信号をパルス化することによりC/N値を向上した結果について紹介した.
 中川氏(日大)の講演は,多値記録方式における原理的な信号強度の低下によるC/N値の劣化を波長多重再生により改善する提案に関するものであった.始めに仮想光学定数により多値記録用多層記録媒体全体の等価的なカー回転角,反射率等を計算し,C/N値の一般式を導出した.次にこれを記録層2層の4値記録の場合に適用し,それぞれの記録層に関わる磁気光学効果の波長依存性を利用して,2波長再生することによりC/N値の向上が図れることを示した.最後に具体的な例としてTbFeCo/Garnet 及び TbFeCo/TbFeCo媒体における2波長再生の際のC/N値の向上について示した.
 参加者はやや少なかったものの講演後も白熱したディスカッションが続き,会場の時間制限で議論を中断せねばならなかったほど有意義な研究会であった.
杉本直登(NTT),河村紀一(NHK)