第10回磁性多層膜の新しい様熊専門研究会
第2回光スピニクス専門研究会
合同研究会

日 時:平成7年5月18日(木)14:00-17:00
会 場:日本大学理工学部駿河台校舎8号館2階
第821会議室
参加者:約30名

講演題目:
(1)遷移金属醸化物の電子構造と物性
西原美一(亀総研)
(2)薄膜成長と表面構造電気伝導
井野正三(東大理学部)
(3)偏極2次電子によるAu/Fe内の電子のスピン偏極直接検出
小池和幸(日立基礎研)

磁性多層膜の新しい機能専門研究会は,発会以釆, おおむね, 巨大磁気抵抗効果, 光磁気記録材料,その他関連現象と材料の 順に最近の話題を取り上げてきているが,今回は3番目の順番 に当たる.今回は光スピニクス専門研究会と合同で,最近注目 されている上記の3つの基礎的な話題を取り上げた.参加者は 約30名,極めて基礎的な話題であったが質疑も活発で,まず まずの会議であった.以下,その概要を報告する.
西原先生は,ベロプスカイト型遷移金届醸化物に現れる磁性 と伝導現象を電子構造の変化,特に, ベロプスカイト型遷移金 属酸化物のd電子間のギャップとバンド幅の関係価数変化の 役割, LaTi03-y, LaV03-y など Ti, V系におけるキャリァー制 御による金属-非金属転移やそれに伴う磁性の変化, などを丁 寧に話された.
井野先生は,Si(111)面上における各種金属の表面構造を RHEBD で観察している過程で RHEED-全反射角 X-線同時分 折法を思い付かれた経緯とその時の実験の紹介,Si(111)面上 の Ag/3x/3 構造の Ag のサーファクタント効果を利用し た原子置換成長,表面電気伝導の測定法など表面に係わる色々 な興味深い数々の現象を,分かりやすくお話しされた.実際に 薄膜の成長に携わっている者にとって大変有益な話であった.
また,小池先生は,Fe単結晶(110)面上にAu超薄膜を成長し ながらAuの偏極反射2次電子を測定するとその強度がAuの 膜厚に対して振動的に変化する現象について話された.これ は,Au層内に生成するスピン偏極量子井戸準位により直感的 に説明できるが,スピン偏極度が理論予測と合わないことや振 動に寄与する重子が何に由来するかなど,まだ未解決な問題の あることも話された.それぞれの講演に対して,活発な質疑が 行われ,全般に良い変囲気の研究会であったと思う.

最後に, この紙面を借りて, オーガナイザーとして,講演者 の諸先生方に感謝の意を表します.

(電総研:片山利一)