第60回磁気工学専門研究会
テーマ: 応用磁気計測の最先端とそれらが拓く磁性研究の新たな展開
- 1.日時:
- 2016年7月29日(金)13:30~15:45
- 2.会場:
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東京工業大学田町キャンパス・イノベーションセンター東京
5階リエゾン室501AB
住所: 東京都港区芝浦3-3-6
JR山手線・京浜東北線田町駅下車徒歩1分 - 3.プログラム:
- 13:30~14:15
- 「高輝度・高スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡」
鈴木雅彦氏 (物質・材料研究機構) - 休憩
- 14:30~15:15
- 「小角X線/中性子散乱を利用した新しい軟磁性材料の研究」
間宮広明氏(物質・材料研究機構) - 15:15~15:45
- 「総合討論」
- 4.オーガナイザー:
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Adarsh Sandhu (電通大) sandhu_at_ uec.ac.jp
間宮 広明 (物質・材料研究機構) MAMIYA.Hiroaki_at_ nims.go.jp
野田 紘憙 (和歌山大) knoda_at_ center.wakayama-u.ac.jp
高村 司 (豊橋技科大) takamura_at_ eiiris.tut.ac.jp
吉田 敬 (九大) t_yoshi_at_ ees.kyushu-u.ac.jp - 5.参加費:
- 無料
- 6.入会希望連絡先:
- 代表世話人 Adarsh Sandhu (電通大) sandhu_at_ uec.ac.jp
注:(_at_ は @ にしてご使用ください。)
【講演概要:高輝度・高スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡】
スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡 (SPLEEM)は、低エネルギー電子顕微鏡 (LEEM)の入射電子線をスピン偏極電子線にすることで磁性体表面の磁区観察を行う手法である。SPLEEMの特長は10 nmオーダーの高い面内分解能があること、表面付近の磁化ベクトルの方向を三次元的に解析できること、投影型の顕微鏡なので画像取得時間が比較的に短いことなどが挙げられる。しかし、一般的なSPLEEMでは、電子銃のスピン偏極度および輝度が低く、十分な磁区コントラストを得る為には1枚当たり5から30秒程掛かっており、LEEMがもつ実時間観察のメリットが生かされていなかった。そこで、大阪電気通信大学の越川グループ、名古屋大学の中西、竹田グループが共同で新しい高輝度・高スピン偏極度の電子銃の開発が行われた。この電子銃では、GaAs/GaAsP歪超格子薄膜を電子源として用い、励起レーザー光を電子源の背面から照射する構造としたことで、90 %の高偏極度 (従来型は20から25 %)と1.3×107Acm-2sr-1の高輝度 (従来型の10000倍)が実現している。その結果、1枚当たり0.02秒で磁区観察が可能となり、実時間での磁区観察が実現した。この新しいSPLEEMを用いて、スピントロニクスデバイスの材料として期待されているCo/Ni多層膜の積層過程における磁区挙動の研究も行っており、その結果についても紹介する。
【講演概要:小角X線/中性子散乱を利用した新しい軟磁性材料の研究】
従来、良好な軟磁気特性を発現させるために内部に全く構造を持たない完全結晶が好まれてきたが、そこに構造解析を得意とする中性子散乱実験が主役となる余地は少なかった。ところが、近年、軟磁性材料に求められる要求も多様化し、ナノ複相組織を制御して高い電気抵抗と大きな透磁率を両立させるナノ結晶・ナノグラニュラ軟磁性体や界面活性剤を用いて流体と磁性ナノ粒子を複合化し流動特性と軟磁気特性を両立させる磁性流体など内部構造を活かした軟磁性材料の開発が盛んになっている。また、磁気冷凍でも低ヒステリシス損失と高エントロピー変化を両立させるために特異な磁気構造を持つ磁性体の探索が始まっている。本講演では、こうした新しい軟磁性材料の開発に活躍する中性子散乱実験の現状の一端を紹介する。