131.02
【分野】磁気応用
【タイトル】レアアース系高温超伝導ワイヤを用いたNMR装置の開発
【出典】
R. Piao, S. Iguchi, M. Hamada, S. Matsumoto, H. Suematsu, A.T. Saito, J. Li, H. Nakagome, T. Takao, M. Takahashi, H. Maeda, Y. Yanagisawa, “High resolution NMR measurements using a 400 MHz NMR with an (RE) Ba2Cu3O7-x high-temperature superconducting inner coil: Towards a compact super-high-field NMR”, J. Magnetic Resonance (2016) doi:10.1016/j.jmr.2015.11.015
「コンパクト超高磁場NMRの実現へ」2016年1月8日
理研プレスリリース http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160108_2/digest/
JST プレスリリース http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160108/index.html
千葉大学プレスリリース
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/pdf/2015/20160108.pdf
【概要】
理化学研究所、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社、物質・材料研究機構、日本電子株式会社、千葉大学、科学技術振興機構の共同研究グループは、磁場の空間的な乱れを解決する超精密磁場発生手法を開発した。これにより、レアアース系高温超伝導ワイヤを用いたNMR装置で、実際にタンパク質を高分解能で測定することに初めて成功した。
【本文】
NMRは磁場が高くなるほど感度と分解能が向上するため、高磁場を発生させるために超伝導ワイヤをコイルに巻いた電磁石を作製し、低温で超伝導電流を流していた。レアアース系高温超伝導ワイヤは優れた機械的強度を持つため実用に適しているが、ワイヤの持つ大きな磁性により磁場が乱れ、均一な磁界が得られないという問題が残されていた。共同研究グループは、小さな鉄片を試料の周囲に設置することで、均一な磁場空間を作る超精密磁場発生手法を開発した。そして、これを用いてレアアース系高温超伝導ワイヤのコイルを用いた400 MHzのNMR装置を製作し、タンパク質試料の高分解能NMR測定に成功した。今回確立された超精密磁場発生手法は、コンパクト超高磁場NMR開発に不可欠な技術であり、これによって、現在の世界最高記録である1020 MHzを上回る超高磁場でありながら極めてコンパクトなNMR装置の実現が期待できる。このような超高磁場NMRが実現すれば、膜タンパク質の理解が進み創薬に大きく貢献するとともに、二次電池の素材や量子ドットなどの先端材料開発が大いに加速するであろう。
(東北大学 金属材料研究所 梅津理恵)