70.01
- 分野:
- 磁気計測
- タイトル:
- スピン偏極走査電子顕微鏡でNd-Fe-B系永久磁石の高温磁区観察に成功
- 出典:
- 孝橋照生ら 日本顕微鏡学会第66回学術講演会発表要旨集P71
- 概要:
- 日本顕微鏡学会第66回学術講演会で日立製作所中央研究所がスピン偏極走査電子顕微鏡を用いてNd-Fe-B系永久磁石の高温磁区観察に成功
- 本文:
- 5月23日-26日に名古屋国際会議場で開催された日本顕微鏡学会第66回学術講演会で日立製作所中央研究所の孝橋らは、新たに開発した試料加熱機構を備えているスピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)を用いてNd-Fe-B系永久磁石の高温磁区観察に成功したと発表した。
スピンSEMは、磁性体試料から放出される2次電子のスピン偏極度を利用する磁区観察装置で、高分解能測定(10nm)や、3次元的に磁化方向の分析が可能といった特長を持つ。今回の発表はハイブリッドカーのモーター材等で需要が増加しているNd-Fe-B焼結体磁石、および、希少重希土類元素を使用しない高保磁力化技術およびコンポジット磁石開発の観点から研究対象となっているNd-Fe-B系微結晶異方性磁石を対象にスピンSEM観察を試みたもので、真空チャンバ内での劈開や、鏡面研磨した表面を真空チャンバ内でイオンスパッタにより清浄化することなどにより、試料表面の酸化の影響を排除し、鮮明な磁区像を取得した。微結晶異方性磁石では多数の結晶粒をまたぐ磁区が形成されていることが観察された。さらに、焼結体においては280℃までの加熱をスピンSEM下で行って磁区の変化を観察し、温度上昇に伴いそれら磁区の磁化ベクトルの方位が次第に乱れる様子を視覚化した。これらの結果より、結晶粒と磁区に関して、その形状や大きさ、粒子間相互作用および局所磁気異方性などとの関係を議論できる可能性が開かれた。
(日立金属株式会社 磁性材料研究所 広沢哲)