2.04
2.04 最近の国際会議から:MML’04
スピンポンピングによるスピンバルブ膜のαパラメータの増大(MML’04)
Interuniversity MicroElectronics Center(オランダ)のDe Boeckらにより、パーマロイ膜のGilbert Damping Parameter (αパラメータ)に関する興味深い報告が行われた(I-30: Increased Gilbert Damping in Spin Valve and Magnetic Tunnel Junction Devices)。
De Boeckらは様々な膜構成のパーマロイ膜について、時間分解MOKE法を用いてαパラメータを決定した。スピンバルブ構造の場合は、スピンポンピング効果によりパーマロイ膜のαパラメータが増大し、強磁性トンネル接合の場合は、その効果はほとんど無視できるほど小さいと報告した。さらに、パーマロイ膜の下地層としてCu、Ta、Cu/Ta層を成膜した場合には、Cu下地層ではスピンポンピング効果はあまりなく、Ta下地層では大きいことが報告された。αパラメータはスピンのダイナミクスを決定する重要なパラメータであり、また、スピン注入磁化反転の臨界電流や反転速度を決定する要素でもある。本来、材料に依存した値を持つが、すでに東北大の 宮崎グループにより示されているように、膜構成を工夫することによってαパラメータを制御することも可能である。
今後、スピントロニクスの発展とともにスピンダイナミクスの理解が重要となると思われる。
(産総研 長浜 太郎)