3.09

3.09:PASPS III

半導体スピントロニクスの国際会議が開催された

  7月21~23日の3日間、The 3rd International Conference on Physics and Applications of Spin-Related Phenomena in Semiconductors(PASPS III)が米国カルフォルニア州サンタバーバラで開催され、主に半導体スピントロニクス関する約220件の講演が行われた。講演内容はそれぞれ強磁性体と非磁性半導体と用いた研究に大別される。
  強磁性体を用いた研究では、応用を強く意識した研究が金属・半導体系材料を問わず多く見られた。特に、電流駆動による磁化状態の制御に関する研究が注目された。この技術はギガビット級MRAMの実現に必要とされており、同分野の研究者の応用への意識の高さを感じた。また、新物質開発においては、新規の強磁性物質の報告が相次ぐ一方で、同じ物質でもその強磁性を否定する実験結果が他グループより報告されるなど、混乱した状況が見られた。今後の詳細な検証実験が待たれる。
  一方、非磁性半導体を用いた研究では、二次元電子ガス、量子井戸および量子ドット中の電子(核)スピン操作・観測に関するものが中心であった。これらの物質中における比較的長時間のスピンコヒーレンス時間を利用して、外部電場等によるその制御実験や、動的振る舞いに関する研究が多数報告された。現時点における非磁性半導体における研究の多くは、基礎物理的研究の意味合いが強いと思われるが、将来、量子コンピュータやスピントランジスタの実現に結び付くものと期待される。
  次回は2006年に日本で開催される予定である。

(産総研 齋藤 秀和)

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