37.04
- 分野:
- スピンエレクトロニクス
- タイトル:
- MRAM実用化のためのダブルバリア垂直MTJ
- 出典:
- IEEE Trans, Magn, Vol.43, No.2 914 (2007)
- 概要:
- 国立雲林科技大学(台湾)の研究グループはダブルバリア垂直MTJを作製し、MR比のバイアス電圧依存性を測定した。
- 本文:
- 大容量かつ高速動作が可能なMRAMの実現には出力電圧の増大が必要不可欠である。しかしMTJのバイアス電圧増大に伴い、MR比が減少してしまうことが報告されている。Gbit級のMRAMの実現には出力電圧が400mVは必要とされ、その場合のMR比はゼロバイアスに比べ半減するという結果も挙がっている。
打開策としてMTJの絶縁層を1層から2層に増やしたダブルバリアMTJ (DMTJ) が近年注目されている。国立雲林科技大学の研究グループは2つのアルミナ絶縁層から成るDMTJを作製した。構成はGdFeCo/AlO3/GdFeCo/FeCo/AlO3/FeCo/TbFeCoであり、保磁力差型垂直DMTJである。MR比測定の結果、ゼロバイアスでのMR比74%を達成し、これまでの垂直MTJにおいては最大値を得ている。
さらにバイアス電圧依存性もシングルバリアと比べて1/2に低減することに成功した。これはDMTJがMTJの直列回路と等価であり、一つのMTJにかかる電圧が半減することに起因しているとされている。測定結果より、実用化に必要である400mVのバイアス電圧印加時に55%という充分なMR比を得ている。MRAM実用化において出力電圧の確保は避けて通れないので、今後の発展に期待したい。
(東京工業大 齋藤 直哉)