2.03
2.03 最近の国際会議から:MML’04
エピタキシャル反強磁性層による交換結合の振動(MML’04)
Max Planck研究所のKuchは、エピタキシャル成長したCo/FeMn/CoをPhoto Emission Electron Microscopy (PEEM)を用いて観察し、交換結合について調べた結果について報告した(2日目招待講演:Magnetic Interface Coupling in Single-Crystalline FM-AF Bilayers and FM-AF-FM Trilayers)。下部のCo層が8原子層の場合、FeMnが13.9原子層のとき反強磁性的な結合を示すが、FeMnが13.4原子層の場合は強磁性的な結合となる。一方、下部のCo層が8.5原子層の場合、FeMnが13.9原子層のとき強磁性的な結合であり、FeMnが13.4原子層のときには反強磁性的な結合を示した。交換結合が界面の原子層単位での平滑さ、ステップ密度に非常に敏感であることがわかる。
また、エピタキシャル反強磁性膜(Mn(001)/Co(001))を用いた研究がEindhoven大のKohlheppによって報告された(2日目招待講演:Oscillatory Magnetic Interface Exchange Coupling Observed in Epitaxial fct-Mn(001)/Co(001))。Cu(001)基板上にMn(001)/Co(001)を、Wedge形状で成膜し、それぞれの膜圧依存性を調べた。その結果、交換結合や保磁力等が1原子層周期で振動し、Kuchら同様、界面のステップ密度が非常に重要であると報告した。
反強磁性体によるピン止めはスピンバルブ構造を持つデバイスにとって不可欠な技術であるが、その物理的な理解はあまり進んでいなかった。今後、このような高品質な試料を用いた研究が進み、物理的な機構の解明が進むとともに、ピン止め層の高性能化が期待される。
(産総研 長浜 太郎)