14.02

分野:
磁気物理
タイトル:
Dy@C82のMCDによる磁化解析[続報] (名古屋大・篠原研究室ほか)
概要:
 磁性金属内包フラーレンには多くの種類があるが、その磁気秩序についてDyを内包したC8282という高次フラーレン(Dy@C82)について詳細に検討された。
本文:
 磁性金属であるDyを内包した高次フラーレンの磁気円二色性(MCD)による磁化解析は既に既報であるが(https://www.magnetics.jp/tech-info/inf_index/inf_jikibutsuri/050714_050714_01/)、第29回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(京都大学)にて詳細が報告されたのでレポートする。
  試料であるDy@C82の膜は20 K以下で磁性を示し、さらにその起源は確かに内包されたDyであるとの議論がされた。Dyは電子3つをケージであるC82にトランスファーし、自身は+3価の帯電することは既によく知られている。今回の解析によれば、Dy@C82の磁気秩序はDyからフラーレンケージに移動した電子を介して内包フラーレン間で発現しているとのことである。磁化曲線からの明確な磁性の存在はまだ確認されていないが、当グループは本材料が20 K以下で磁性を有することはほぼ間違いないと考えているようである。さらに面白いことはDy2C2@C82のような磁性原子と炭素原子が共有結合を有して内包されているフラーレン系の場合にも同様に低温で磁性を有する、との実験結果が得られたことがある。金属内包フラーレン自身は発見から20年が経過し、その電子物性・磁性、さらには電界効果型トランジスタ特性まで十分に調べられた感もあったが、このような手法を導入することで新しい視点からの研究が開拓される可能性があり、しばらく注目されそうな気配である。C82は金属内包をしやすい、いわばマジックナンバーといわれる82個の炭素ケージからなるフラーレンであるが、MCDにより他の多くの磁性金属内包フラーレンの磁性が明らかになることを願う。

(大阪大学 白石誠司)

磁気物理

前の記事

14.01
磁気物理

次の記事

14.07