28.03
- 分野:
- 磁気物理
- 出典:
- Applied Physics Letters 89(2006)112505.
- タイトル:
- ステップSrTiO3基板上のLa1-xSrxMnO3薄膜の磁気ドメインをXMCD-PEEMにより観察に成功
- 概要:
- 東京大学・谷内らは、これまで磁気力顕微鏡では観察が困難であった引張応力のかかるSrTiO3基板上のLa1-xSrx単結晶薄膜の磁気ドメイン構造の観測にXMCD-PEEM(Photoelectron emission Microscopy with X-ray Magnetic Circular Dichroism)を用いることで成功した。磁気ドメインの多くは、基板のステップにより誘起された1軸磁気異方性により、ステップ方向に沿った磁化容易軸に平行にそろい、縞状に整列することが分かった。またこの実験によりステップにより誘起された1軸磁気異方性だけではなく、La1-xSrx単結晶薄膜の引っ張り応力による2軸結晶磁気異方性の存在も示唆された。
- 本文:
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電極としてハーフメタリック強磁性体を用いたスピントンネルジャンクションが磁性電子デバイスへの応用に期待されており、多くの研究がされている。その材料の候補のひとつとして、正孔をドープしたマンガン酸化物La1-xSrxがあげられる。このマンガン酸化物の単結晶薄膜は基板により誘起される格子ひずみに、磁気異方性が非常に敏感であることが知られている。La1-xSrx単結晶薄膜の磁気異方性には基板のステップにより誘起された1軸異方性と容易軸に沿った2軸異方性が存在することが知られている。これまで磁気力顕微鏡では単結晶面内の2軸異方性の観察が困難であった引張応力のかかるSrTiO3基板上のLa1-xSrx単結晶薄膜の磁気ドメイン構造の観測にXMCD-PEEM(Photoelectron emission Microscopy with X-ray Magnetic Circular Dichroism)を用いることで成功した。磁気ドメインの多くは、基板のステップにより誘起された1軸磁気異方性により、ステップ方向に沿った磁化容易軸に平行にそろい、縞状に整列することが分かった。またX線の入射方向と[110]とのなす角を変化させることにより、ステップにより誘起された1軸磁気異方性だけではなく、La1-xSrxMnO3単結晶薄膜の引っ張り応力により現れた磁化容易軸[110]に沿った2軸結晶磁気異方性の存在を示した。
(高輝度光科学研究センター 水牧仁一朗)