64.03
- 分野:
- 磁気物理
- タイトル:
- 高圧下でのX線磁気円二色性分光による磁気測定法の開発
- 出典:
- ‘X-ray magnetic spectroscopy at high pressure: performance of Spring-8 BL39XU’, Naomi Kawamura, Naoki Ishimatsu, and Hiroshi Maruyama, Journal of Synchrotron Radiation, 16, 730-736 (2009)
- 概要:
- 高圧・低温・強磁場という極限条件においてX線磁気円二色性(XMCD)分光法による磁気測定を行う技術を開発した。更に、同測定技術を用いて高圧条件下におけるMn3GaCの強磁性の発現、およびErCo2中のCoモーメントの減少を観測した。
- 本文:
- 高輝度光科学研究センターの河村直己副主幹研究員、広島大学大学院理学研究科の石松直樹助教、同研究科の圓山裕教授らの共同研究グループは、高圧(? 50 GPa)・低温(2 – 300 K)・強磁場(? 10 T)という極限条件においてX線磁気円二色性(XMCD)分光法による磁気測定を行う技術を開発した。この成果は、大型放射光施設SPring-8の高輝度X線光学系(BL39XU)に、超電導マグネット(SCM)と独自に開発した小型ダイアモンドアンビルセル(DAC)を組み合わせることにより実現したものである。また、同測定系はNaCl結晶のX線回折を利用した圧力のその場計測機構も備えており、印加圧力の校正が可能である。数10 GPa の圧力下において磁気測定が可能な手法は少なく、本技術は高圧磁性の有力な研究手段となる。 XMCD分光法は、元素別の磁気測定が可能であることから、ミクロスコピックな観点から重要な磁気情報を提供する。同研究グループは開発した実験手法を遍歴電子磁性の研究に適用し、逆ペロブスカイト構造Mn3GaCにおいて、高圧の印加により強磁性状態が安定化され、極低温下で反強磁性から強磁性への相転移が起こることを明らかにした。また、ラベス相ErCo2化合物においては、高圧の印加によりCoのモーメントのみが消失することを示した。 このような様々な外場による磁性制御の研究は、応用につながる新たな機能を有する磁性材料の開発に寄与することが期待される。関連する情報として本技術情報サービスの33.03、56.03等も参照されたい。
(日立製作所 根本 広明)