7.03
7.03:(第11回ハイブリッド専門研究会開催報告)
高Ku磁性薄膜、熱アシスト磁気記録の最近の進展
キャノンの安居 伸氏らは微粒子グラニュラー型の垂直磁気記録媒体への応用を視野に、ポーラスアルマイトと同様の相分離型ナノ構造を有するAlSi膜が報告された。製膜速度を低速度にすることで,Alが垂直な柱状に平均半径8nm,相分離平均距離10nm程度の良好な相分離膜が実現できる。Alをエッチング後Coをメッキすることで,柱状のCo粒子を実現でき,450°C程度の熱処理でHcが増加する。MIGヘッドの記録で385kfci程度で記録磁区をMFMで観察できた。この構造にFePtをめっきする方法を検討し、メッシュの穴が10nm以下になると,穴内部へのめっきが困難になることが明らかとなった。
早大の朝日 透氏らは、高Ku材料として期待されるSmCo5垂直磁化膜に関し、下地層との格子整合、下地層表面荒さ、Cu添加効果について検討結果が報告された。Cu(111)を下地膜とすることでSmCo5(001)との格子整合が良くなるが、CuがSmCo5層に拡散することでCoと置換し、1-5相が安定になり結晶化温度が下がっている可能性がある。また,下地層に平坦度の良いCuとTiの複合下地層を用いることにより、垂直方向の磁気ヒステリシス曲線の角形比を向上できることを明らかにした。SmCo5は耐食性の悪いことが懸念されているが,Cuを添加することで耐食性も向上することも報告された。
東芝の喜々津 哲氏らは熱ゆらぎ媒体の課題のひとつである熱ゆらぎ加速現象を抑える新規な媒体構造として、交換結合二層膜について、そのアイディアと実験結果が報告された。KuとTcの異なる媒体を交換結合することで保磁力の温度変化を非線形にすることができる。実際にCo/Pd人工格子を積層させた媒体を作成し、ほぼ計算通りのHc温度依存性が得られた。
東工大の中川茂樹氏は高Ku磁性薄膜であるFePtを垂直磁気記録媒体として用いるために垂直配向させる新しい技術が紹介された。従来行われている配向シード層を用いるのではなく、ガラス基板上に直接Feを成膜し、そのFeとPtを交互に積層し、その後還元雰囲気でアニールして規則化させる。低い成膜速度でFeを堆積することで垂直配向させることができる。分析の結果、基板との界面に薄いFeの酸化層が出来ており、これが垂直配向に寄与している可能性がある。実用的な垂直磁気記録媒体の場合、記録層と軟磁性下地層との距離をできるだけ小さくする必要があり、この技術はその観点において大きなメリットが期待される。
当日は、活発な質疑が行われ、今後益々境界領域の研究分野であるハイブリッド記録関係の研究者の交流の重要性が実感される研究会であった.
(東芝 喜々津 哲、東工大 中川茂樹)