第47回日本磁気学会サマースクール

磁気は情報,通信,制御,エネルギー,資源,環境,医療,福祉などに利用され,半導体と並ぶ大きな産業規模をもっていますが,学校教育においては,必ずしも十分な教育がなされているとは言えない状況です.そのため,日本磁気学会(MSJ)では毎年「MSJサマースクール」として,磁気の基礎から応用の最先端までを網羅した講義を集中形式で行い,磁気の分野で活躍が期待される若手,中堅の方々を応援してきました.本年は東京都内で三日間の開催を予定しています(オンラインでの参加も可能です).本スクールは,磁気の基礎から応用における最近のトピックスを含め,幅広く,平易に学んでいただけるよう企画されています.さらに今年度から,近年,注目されている量子や人工知能(AI)と磁性分野に関するテーマも新設いたしました。また会社や学校の垣根を越え,専門を同じくする個人同士の親交のきっかけや,講師の先生方と気軽に討論する機会が生まれます.この貴重なチャンスを逃さず是非お役立てください.

日時:
2024年8月6日(火)~8月8日(木)
会場:
ハイブリッド開催(現地開催及びオンライン開催)
現地会場:ワイムお茶の水 Room B(東京都千代田区)
オンラインでの参加をご希望の方には,別途電子メールにて会場URL等をご連絡いたします。


協賛:
応用物理学会、電気学会 、日本化学会、日本金属学会、日本物理学会、粉体粉末冶金協会
参加登録:
締め切りました
参加費:
受講料(消費税込み、意見交換会参加費別途。一度受けた参加費は返却いたしません)

正会員・賛助会員 39,600円
協賛学会会員 44,000円
学生会員 24,000円
協賛学会学生会員 26,500円
一般非会員 55,000円
学生非会員 33,000円

初等磁気工学講座から続けて参加される学生の方には割引があります。

非会員の方は,参加登録時に会員登録して頂けますと,会員価格でご参加できます。
入会のご案内はこちら

払込方法:
Paypal(クレジットカード決済),郵便振替,銀行振り込み
*Paypalを選択:登録のメールアドレスへ請求書をお送りいたします。
PayPal(ペイパル)メール請求書の決済手順
*郵便振替,銀行振り込みを選択:下記口座まで参加費をお振込みください。

郵便振替 00100-1-63028
銀行振込 三菱UFJ銀行 神保町支店
(店番013)普通預金2259640
口座名義 公益社団法人 日本磁気学会

お支払いの際は、参加者名でお振込みください。
それ以外の名義で振込の場合は、どなたの参加費かを必ず電子メールにてお知らせ下さい。

申込締切・支払期限:
2024年7月5日 12日(金) 締切を延長しました
問い合わせ先:
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館207号室
(公社)日本磁気学会
Tel:03-5281-0106
E-mail:msj@bj.wakwak.com
講義分野:
磁気工学の基礎,パワエレ磁気工学,磁気記録, 磁性薄膜,量子コンピュータ,パワーインダクタ,スピントロニクス,AIと磁性,磁気センサ,ソフト磁性材料,ハード磁性材料,生体磁気
プログラム・講義概要:

8月6日(火)
午後 13:00~14:30 磁気工学の基礎(物性-材料特性-応用)

藤枝 俊(島根大)

本講義では、磁気工学の基礎として磁性体の基本的な事柄について概説する。具体的には、代表的な磁性の種類、電子による磁気モーメントおよび複数個の電子からなる原子の磁気モーメント、代表的な磁性体である常磁性体および強磁性体の磁気的性質について述べる。また、強磁性体を応用する際に重要となる磁区構造、磁化過程およびヒステリシス曲線について述べる。

14:45~16:15 ハード磁性(永久磁石の温故知新)

飛世正博(日亜化学)

ハード磁性材料(永久磁石)は、電気自動車や産業用機器のモーター、ハードディスクドライブのVCMやスピンドルモーター、風力発電機などに幅広く使用されている。とくに電力の半分を使っているモーターの基幹部品であり、省エネおよび経済安全保障の観点からもたいへん重要である。この講座では永久磁石の種類、磁気特性、製法など基礎的事項を磁気工学的側面から概説するとともに、磁石の開発ヒストリーにも触れながら材料研究の魅力を伝えたい。

16:30~18:00 パワエレ磁気工学(パワーエレクトロニクスにおける磁気デバイスの基本・応用)

今岡 淳(名大)

本講義ではパワーエレクトロニクス用の磁気部品(インダクタ・トランス)の基本から応用技術まで概説する。パワーエレクトロニクスにおいては様々な工学分野を跨ぐ分野であり、化合物半導体デバイスの利用や、電動化された移動体の市場拡大の背景に対して磁気部品の更なる高性能化が求められている。
本講演では、パワエレ磁気系部品の小型化、高放熱化、低ノイズ化に焦点をあてた最新技術も合わせて紹介する。

8月7日(水)
午前 9:15~10:45 磁気記録(磁気記録の基礎と発展)

青山 淳(Western Digital)

本講義では、ハードディスクドライブの大容量化を支える垂直磁気記録技術の基礎を解説する。はじめに、ハードディスクにおける情報の記録と再生の仕組みを要説し、磁気記録のトリレンマとして知られる技術的課題について説明する。次に、エネルギーアシスト磁気記録やパターン媒体記録など、この課題を克服するために現在検討されている次世代の記録技術について概説する。

11:00~12:30 磁性薄膜(磁性薄膜の作製・評価方法と基礎物性)

白土 優(阪大)

磁性薄膜では表面や界面の効果によりバルク材料にはみられない特異な磁性を発現する。これらを利用することで、磁気記録やスピントロニクスデバイスをはじめとする磁気・スピンデバイスの高性能化が図られている。本講義では磁性薄膜の作製方法と評価方法について、その原理と特徴を述べ、磁性薄膜特有の物性である垂直磁気異方性、層間相互作用などを、そのメカニズムを含めて説明する。

午後 13:30~15:00 量子コンピュータ (人工系の量子現象と半導体スピン量子ビット)

大塚朋廣(東北大)

将来の情報処理技術に向けて、量子コンピュータなどの量子技術が期待されている。量子技術においては、量子状態を精密に制御し、観測することが必要であり、これらの技術が成熟し、人工的な量子系を実現し活用できるようになってきている。本講義では、半導体微細構造などの人工系における量子現象について、基礎的なところから説明する。また、これらを応用し、半導体量子ドット中の電子スピン量子状態による量子ビットなどについて紹介する。

15:15~16:45 パワーインダクタ(磁気やインダクタやトランスの基礎とコンバータ回路)

細谷達也(村田製作所)

 「磁気を制する者はパワエレを制す」と言われ、インダクタやトランスは、電気システムの高効率化や小型軽量化を左右し、インダクタやトランスを扱うスイッチング電源やパワーエレクトロニクスは、あらゆる電気システムに用いられ、AI革命やEV進化を支えている。インダクタやトランスは、複数の要素が複雑に絡み合い、性能を最大化する最適化の技術難易度は非常に高い。産業で役立つ実用技術を教える大学や書籍はほとんどない。
 本講義では、インダクタやトランスに関して、電気や磁気の基礎から、産業で役立つ応用まで、重要な技術を分かり易く解説する。

17:00~18:30 スピントロニクス(スピントロニクス材料・デバイスの基礎)

介川裕章(NIMS)

本講義ではスピントロニクス分野の応用デバイスとそれにかかわる現象を中心に概説する。スピントロニクスは電子の有する電荷に加えスピンの自由度を同時に活用する研究分野であり、ハードディスク(HDD)の磁気ヘッドや情報不揮発性の固体メモリであるMRAMなどに応用され、私たちの身近なところでその技術が活躍している。スピントロニクスはナノテクノロジーの発展とともに2000年頃から急速に発展を遂げ、現在ではスピンが関わる広い物理現象を含むようになったため本講義ですべてを扱うことは難しい。このため、応用に重要な役割を果たしてきた磁気抵抗効果、磁化状態の制御方法(スピントルク)、主なスピントロニクス材料について要点を絞って説明する。

18:45~20:45 意見交換会(現地開催)
8月8日(木)
午前 9:15~10:45 AIと磁性(MIによる磁性材料探索)

岩崎悠真(NIMS)

本講義では、データサイエンスを材料開発に応用するマテリアルズ・インフォマティクスに関して概説する。前半は、材料開発における4つのインフォマティクス(マテリアルズインフォマティクス、プロセスインフォマティクス、計測インフォマティクス、物理インフォマティクス)を簡単に紹介する。後半は、データサイエンスと材料実験とロボティクスを組み合わせた自律材料探索技術を紹介し、磁性材料を中心にその応用事例を述べる。

11:00~12:30 磁気センサ(高感度磁気センサの基礎とスピントロニクスセンサの最新状況について)

熊谷静似(スピンセンシングファクトリー)

本講義では、比較的高感度な磁気センサについて、その基礎と応用について解説する。応用については、地磁気の様な磁気を直接検出する以外に、電流・角度・位置・金属の破断、金属異物の有無・生体信号等、多種多様な用途があり、できるだけ幅広く説明する。又、スピントロニクスセンサの一つであるTMRセンサの最新状況について紹介する。

午後
13:30~15:00 ソフト磁性(軟磁性材料の基礎と応用)

太田元基(島根大―プロテリアル)

本講義では,磁化し易く磁気異方性が低いと定義されるソフト(軟)磁性材料について基礎的な観点からそれらの静的磁化過程、磁気異方性および動的磁化過程(周波数特性)を、また、デバイス応用の観点から材料選択に関する考え方について紹介する。

15:15~16:45 生体磁気(生体と磁気,磁気医療の基礎と応用)

吉田 敬(九大)

磁界は体の深いところまで到達するため、磁界の利用によって鮮明な断層撮影が可能となる。また、心拍や脳の活動による微弱な生体磁場を、高感度磁気センサを用いることで非侵襲かつ精度よく計測することが可能となる。本講義では、磁気を用いた医療・バイオ応用の主なものについて、原理や特徴を中心に説明し、近年の動向も紹介する。

チーフオーガナイザ:
 山野井一人(慶大)
サブチーフ: 

 山田啓介(岐阜大)
オーガナイザ:
伊藤直輝(プロテリアル),中田宗樹(三菱電機),中山裕康(産総研),額田慶一郎(パナソニック インダストリー),堀田明良(三菱電機),山下昂洋(長崎大),山田章悟(TDK)