218.02
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【分野】磁気応用
【タイトル】
3つの永久磁石を用いて小さな磁石の位置を3次元的に制御する技術を開発
【出典】
・宇都宮大学工学部ホームページ(研究成果)
・Sakuma, H. Three-dimensional motion control of an untethered magnetic object using three rotating permanent magnets. Sci. Rep. 13, 18052 (2023).
https://doi.org/10.1038/s41598-023-45419-2
【概要】
永久磁石を用いて磁性体を引き寄せるのは簡単だが、磁石から遠ざけるのは簡単ではない。これまで、8つの電磁石や永久磁石を用いて、小さな磁石の位置を制御する技術が報告されていた。宇都宮大学の佐久間洋志准教授は3つの永久磁石を用いて、小さな磁石の位置を3次元的に制御する技術を開発した。
【本文】
永久磁石にクリップなどの磁性体を引き寄せるのは簡単だが、磁石から遠ざけるのは意外と簡単ではない。2つの磁石のN極とN極を近づけたらどうか?多くの場合、片方が反転してS極がN極に引き寄せられるだろう。これまで、多数(例えば8個)の電磁石や永久磁石(制御用磁石)を用いて小さな磁石(被制御磁石)の位置を制御する技術が報告されていた。しかし上記の理由から、被制御磁石を取り囲むように制御用磁石を配置して、主に引力により制御するものが多かった。
本論文では、3つの制御用永久磁石を用いて、解放空間にある被制御磁石を3次元的に位置制御した例が報告されている。図1に示すように、制御用磁石は径方向に着磁した円筒型ネオジム磁石であり、被制御磁石は直径3 mmのフェライト磁石でプラスチック球に埋め込んである。2台のカメラにより被制御磁石を撮影し、画像認識により座標を得る。得られた3次元座標を目標座標と比較し、単純なフィードバック制御により3次元的な位置制御が可能となっている。被制御磁石は制御用磁石から50 mmほど離れた位置において四面体や円とsinカーブを組み合わせたコースを移動した(図2)。位置制御の原理は磁場勾配を用いた典型的なものであり、有限要素法磁場シミュレーションにより検証されている。
このような解放空間における単純な制御方式は、位置計測の課題はあるもののドラッグデリバリーやカプセル内視鏡といった医療分野への応用が考えられる。また、現段階では被制御磁石の動き遅くするためにスライムが用いられているが、将来的には空中での磁気浮上も実現する可能性がある。
(宇都宮大学 佐久間洋志)