第245回研究会報告
「磁気応用のための新奇な微細加工技術」
日時:2023年11月10日(金)13:00~17:20
場所:日本大学理工学部1号館・オンライン開催(Zoom)
参加者:38名(現地:10名,オンライン:28名)
現在,デジタル化社会の飛躍的な発展に伴い,高密度な磁気記録媒体への期待が高まっている.一方で,現行の手法では,これまで以上の高密度な磁気記録媒体の開発は難しい.そこで,半導体デバイスの微細加工技術を応用した高密度磁気記録媒体の新たな作製手法が研究・開発されている.また, 現行技術の性能を凌駕した新奇微細加工技術も提案されてきた.本研究会では,微細加工技術を活用した新たな磁気記録媒体の開発手法や,最先端の微細加工技術を研究している方々に講演いただき,新奇な磁気応用技術の発展に向けた研究方針に関して議論した.
- 「ジブロックコポリマーの方向制御自己組織化を用いた磁性体のナノ加工」
○喜々津 哲(東芝)ビットパターンドメディア加工技術として,方向制御自己組織化技術(Directed Self-Assembly)について紹介された.これらの手法を用いて2.5インチディスク上に周方向に配列した5 Tdot/in2のマスクパターンを形成した結果や,FePt膜の媒体加工を例として,加工ダメージによる不規則化現象が生じることが紹介された.
- 「カーボンニュートラルに貢献するスピントロニクス省電力半導体とその微細化技術動向」
○遠藤哲郎(東北大)
Society 5.0で実現する社会では,IoTで全ての人とモノをつなげる必要があり,演算性能の更なる向上が求められているが,それには大きな消費電力が課題となっている.この消費電力と演算性能のジレンマを解決するゲームチェンジ技術であるスピントロニクス省電力半導体,特に,スピン注入磁化反転を用いたMRAM(STT-MRAM)技術とそれを活用した超低消費電力AIアプリケーションプロセッサ―技術,その基本素子である磁気トンネル接合素子(MTJ)の微細化技術について紹介された.
- 「ウェハボンディングの低温化とデバイス応用」
○高木秀樹(産総研)
ウェハの接合(ウェハボンディング)では,原子レベルで平坦な表面を有することにより,容易に接合界面の密着が形成される.その接合強度を向上させるには高温での熱処理プロセスが必要となる.一方で,デバイス応用を見据えた際には,熱を加えずに強度を向上させる,接合プロセスの低温化が求められる.この低温化による低ダメージ接合は幅広い材料・デバイスに適用が進められており,低温化プロセスやデバイス応用に関して紹介された.
- 「EUVリソグラフィを支える超微細加工材料・プロセスの創製」
○山本洋揮(QST)
コンピュータ性能の更なる向上が要求されている半導体分野において,EUV(極端紫外線)リソグラフィが実現されている.本講演では,EUVリソグラフィを支えるレジスト材料や超微細加工プロセスの創成に関する最近の研究成果として,10nm以下のパターン形成の手法の候補とされる有機・無機ハイブリット微細パターンの形成, EUVリソグラフィレジスト評価システムの高度化,次世代EUVリソグラフィレジスト材料の研究開発に関して紹介された.
- 「非一様光場によるサブナノ加工の進展」
○八井 崇(豊橋技科大)
近接場光の性質である局在性,ナノ領域での電場勾配に起因した新しい光化学反応に着目して,新奇光反応の利用に関して紹介された.本講演では,この性質を利用した新しいナノ光加工の応用について,近接場光エッチングによる表面平滑化や近接場光によるCO2還元反応の促進に関して解説された.
- 「3次元磁気メモリ開発と微細加工技術」
○小野輝男(京大)
人工強磁性体を用いた新規3次元磁気メモリに関して紹介された.人工強磁性体は磁気異方性が大きい記録層と磁気異方性の小さい磁壁層から構成され,磁壁層に人工磁壁が固定されることで安定したビットシフトが可能となることがシミュレーションにより示された.