第194回研究会/第19回光機能磁性デバイス・材料専門研究会報告
「光や磁気を用いた3次元新機能デバイス」
- 日 時:
- 2014年1月10日(金)12:40~17:00
- 場 所:
- 中央大学 駿河台記念館
- 共 催:
- 日本学術振興会 アモルファス・ナノ材料第147委員会、電気学会 フォト・スピントロニクス技術調査専門委員会
- 参加者:
- 54名
光や磁気を用いた3次元新機能デバイスに関して、様々な分野でご活躍の研究者を招き講演して頂いた。マイクロ波アシストを用いた3次元の磁気記録、3次元構造のMRAMや磁壁移動デバイスおよびナノ接合デバイス、さらに、3次元表示素子や磁気イメージングについて講演がなされた。共催ということもあって参加者も多く、各講演で活発な議論がなされた。
- 「スピントルク発振による磁気共鳴を用いた3次元磁気記録」
○佐藤利江1、首藤浩文1、工藤 究1、永澤鶴美1、水島公一1、久保田 均2、今村裕志2、谷口友大2、
田丸慎吾2、荒井礼子2、松本利映2、福島章雄2、鈴木義茂2,3、前原大樹4、江村 藍4、恒川孝二4、○岡本 聡5、菊池伸明5、島津武仁5、北上 修5
(1東芝、2産総研、3阪大、4キヤノンアネルバ、5東北大)記録にスピントルク発振素子(STO)を用いた共鳴アシスト記録,再生にSTOの共鳴吸収を利用した3次元磁気記録が提案された.記録層にはソフト層,ハード層を反強磁性カップリングした層(SyAF)を多層化し,それぞれのSyAF層の共鳴周波数に差をもたせる.再生原理実験としてSTOにSyAFを積層した素子において,SyAFの共鳴周波数においてSTO発振が止まることが示された.記録原理実験としてコプレーナ導波路を用いてrf磁界をCo/Ptドット(Ø230 nm)に印加し,ドット反転磁界が6 kOeから1.5 kOeに減少することが示された.
- 「垂直磁化MTJを積層した多値MRAM素子」
○青木正樹、熊代英之、角田浩司、射場義久、畑田明良、中林正明、髙橋 厚、吉田親子、山崎裕一、長永隆志、杉井寿博 (LEAP)
1度のエッチングで作成できる多値MRAM用垂直磁化MTJ素子が報告された.加工後の素子はテーパ形状を持ち,上部側MTJは下部側に比べて磁性層の体積が小さく,これを利用して書き込み電流に差を持たせた.一方読み出しは下部,上部MTJの抵抗を1 : 2とし,同一のMR比を持たせることで4値の抵抗値を実現した.実際の2値積層型MTJ素子において多段の電流-抵抗特性を得ることに成功し,0.5 V以下の電圧で4値のスピン注入書換えが可能であること,抵抗の4値分離が可能であることが示された.
- 「磁壁電流駆動現象とそのメモリ応用および3次元デバイスへの展望」
○谷川博信1、鈴木哲広1、末光克巳1、大嶋則和1、北村卓也1、苅屋田 英嗣1、深見俊輔2、山ノ内路彦2、池田正二2、大野英男2、林将光3、小山知弘4、千葉大地4、上田浩平5、小野輝男5
(1ルネサス、2東北大、3NIMS、4東大、5京大)3次元racetrack memoryのための電流誘起磁壁移動現象について報告された.磁壁移動はスピン注入トルクが反磁界トルクに打ち勝つことにより生じることが解説され,垂直磁化細線の優位性が示された.Co/Ni垂直磁化細線を用いた平面型racetrack memory構造を試作し,1.3×1012 A/m2という比較的低い電流密度でのracetrack動作を確認した.また,Co/Niの磁壁移動を利用した3端子MRAM素子が紹介され,Co/NiとCoFeB/MgO/CoFeB構造のMTJを結合させることで,Co/Ni内の磁壁を高出力で検出できることが示された.
- 「磁性薄膜エッジを用いたナノスケール接合デバイス」
○海住英生1、近藤憲治1、石丸 学2、弘津禎彦3、石橋 晃1(1北大、2九工大、3阪大)
薄膜を交差して配置し,そのエッジを接合に利用することでリソグラフィ限界を超えた微小磁気接合の可能性が報告された.ポリエチレンナフタレート(PEN)上のNi膜をポリメタクリル酸メチル(PMMA)で挟んで端部をCMP処理することで,下部エッジ層を出し,その上にNiOまたは有機分子(P3HT : PCBM)を積層し,上部エッジを配置することで接合を作成する.24 nm×24 nmサイズのNi / NiO / Niナノ接合デバイスにおいてトンネル現象を,16 nm×16 nmのNi / P3HT:PCBM / Niデバイスにおいて分子内バリスティック伝導を観測した.
- 「磁気ホログラフィーを用いた三次元ディスプレイと体積メモリ」
○後藤太一、高木宏幸、P. B. Lim、井上光輝(豊橋技科大)
ナノ構造を導入した磁気ホログラムメディアの形成,およびこれを用いた磁気ホログラムメモリと3次元ディスプレイの試作が報告された.磁気ホログラムメディアとしては多結晶磁性ガーネット(Bi1.2Dy1.2Y0.6Fe3.6Al1.4O12)を用い,これを1次元磁性フォトニック構造とすることで大きな回折効率が得られることが示された.また,磁性フォトニックメディア内に3次元像用ホログラムパターンを熱磁気記録し,記録されたホログラムを再生光学系により再生することで3次元像を得ることに成功した.
- 「ホログラフィー立体映像表示に向けたスピン注入型空間光変調器」
○青島賢一1、町田賢司1、加藤大典1、和田 翔2、金城秀和1、久我 淳1、菊池 宏1、石橋隆幸2、清水直樹1 (1 NHK技研、2長岡技科大)
GdFe光変調層を有する微小CPP-GMR素子を利用した空間光変調器について報告された.GdFe光変調層はスピン注入磁化反転により制御されるが,その磁化反転臨界電流がGdFe層組成で制御できることが示された.また,この素子を利用した1×10画素の1次元スピン注入型空間光変調器(SpinSLM)を試作し,全ての素子でスピン注入磁化反転することを確認した.また,GMR膜を用いた1 μmピッチの磁性ホログラムパターン(3840×2160 pixel)を作成し,広視野角(±19 deg)の立体像再生に成功した.
文責:加藤剛志(名大)、前田麻貴(HGST)