設立趣意書
(2003年4月)
ゲノム解読の成果を反映した新薬の創製や、遺伝情報に基づく新しい検診・治療法など、画期的な医療技術の進歩が期待され、一大産業市場を形成しつつあるとともに、国際的な研究競争が展開されています。この最先端技術分野では、医学、生命工学、情報工学などのみならず、他の多くの異分野との学際的研究推進や融合技術の開発が重要かつ不可欠です。バイオテクノロジーとナノテクノロジーを複合した「ナノバイオテクノロジー」が、すでに数年前から国外および国内で発足し、かなりの成果をあげています。
さらに、昨年ごろより、バイオテクノロジーとナノマグネティクス(ナノ磁気工学)(ナノ磁性微粒子、MRAM、MEMSなど)を結合することによって、従来のナノテクノロジーの限界を打破する革新的な新技術の開発をめざす研究がクローズアップされています。昨年(2002年)の3M会議(Tampa)および今年のインターマグ会議(Boston)では、ナノ磁気工学とバイオテクノロジーの融合技術に関するシンポジウムが開かれるとともに、チュートリアルでも取り上げられました。
しかし、残念ながらこの新潮流の中における日本人研究者による貢献は少なく、生体磁気工学およびナノ磁気工学の分野で世界をリードしているわが国、およびその母体学会である日本応用磁気学会の構成員としても、残念であるとともに一抹の危機感をぬぐえません。
そこで、このたび、ナノ磁気工学とバイオテクノロジーとを統合する新技術分野を「ナノバイオ磁気工学(ナノバイオマグネティクス)」と命名して、世界的潮流となっているこの分野の日本における進展を目的として、「ナノバイオ磁気工学専門研究会」を新設いたしました。
まさに誕生しつつあるとも言えるこの融合新技術分野に直接携わっている研究者の数が少ない現状をふまえて、本専門研究会では、これからこの分野に進むことを検討している磁気工学研究者をはじめ、医学、生物学、生命工学、情報生命科学などの異分野でナノ磁気工学との融合に興味と必要を感じておられる方々にも積極的に参加を呼びかけることと致しました。このため、最初は、世界の技術動向の現状把握と基本的知識の吸収から出発し、学際的な議論と交流の場を提供することによって、異分野融合による最先端技術の発展と応用分野の拡張を図り、新たな専門分野の構築をめざします。すなわち、ナノバイオ磁気工学を利用した新規な分析・同定技術(DNA解析、タンパク質機能解析、生体分子同定など)や診断・治療技術(遺伝学的および、免疫学的検診法、ドラッグデリバリーシステム、ハイパーサミア、MRI造影法など)の確立をめざして、研究成果発表、情報交換、共同研究の推進などを計ることと致しました。