189.01

【分野】 磁気応用

【タイトル】 磁気抵抗効果(MR)センサアレイによる脳磁計測
【出典】辰岡ら「センサ可動型治具を用いた磁気抵抗効果(MR)素子による体性感覚誘発脳磁場(SEF)の測定」 第60回日本生体医工学会大会・第36回日本生体磁気学会大会 2021合同開催 講演番号O1-7-1-8

【概要】
 TDK株式会社の辰岡らは、磁気抵抗効果(MR)素子による磁気センサと、被験者頭部形状に合わせてセンサ配列を調整可能な治具を開発し、体性感覚誘発脳磁場(SEF)の計測に成功したと、2021年6月中旬に開催された第60回日本生体医工学会大会・第36回日本生体磁気学会大会2021合同開催において発表した。

【本文】
 脳内の神経活動にともなって生じる磁気信号は脳磁図、または脳磁界と呼ばれる。頭表付近における信号強度は最大でも数 pT(10-12テスラ)程度とされ、観測するためには極めて高感度な磁気センサが必要となる。また、脳活動計測のためには数十から数百チャンネルのセンサを頭部付近に配置する必要があり、全頭型SQUIDセンサアレイを用いた脳磁界計測が主流となっている。一方、近年では光ポンピング磁力計、磁気インピーダンス(MI)センサ、磁気抵抗効果(MR)センサの高感度化が進み、これらのセンサを利用した脳磁界計測の試みも増えてきている。
 TDK株式会社はMRセンサの高感度化に関する研究開発を進めており、東京医科歯科大学や金沢工業大学との共同研究により、これまでに心臓の磁気信号である心磁界の計測に成功してきた※。今回、更にセンサの高感度化を進め、また、被験者頭部形状に合わせてセンサ位置を調整可能な治具を開発して脳磁界計測実験を実施し、その成果が2021年6月15日から17日にかけてオンラインにて開催された第60回日本生体医工学会大会・第36回日本生体磁気学会大会2021合同開催において発表された。
脳磁界を計測する際にはセンサを頭表に近づけることで信号/雑音比を高め、かつ、センサアレイを頭表面に沿って配置することで磁界分布を効率よく捉えることが重要である。そのため、20本の磁気センサを挿入でき、法線方向に位置を調整可能なヘルメット型のフレームが製作された。
 脳磁界計測実験では、被験者は仰臥位にて頭部をヘルメット型フレームに固定され、すべてのMRセンサは被験者頭表に密着するように位置が調整された。体性感覚の刺激は右手正中神経に対して行われ、左側頭部領域に配置したセンサアレイで体性感覚誘発脳磁界(SEF)が記録された。4000回の加算平均処理により、M20と呼ばれる反応に関する信号波形を観測することができた。得られた信号から描かれた等磁界線図は生理的に妥当な磁界分布であった。また、SQUIDによる磁気センサアレイでも同じ被験者に対して同様のSEF計測実験が実施され、矛盾しない磁場分布が得られることが確認された。開発したMRセンサとヘルメット型フレームによって、SEFを計測可能であることが示された。

(金沢工業大学 小山大介)

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