第142回研究会報告

「小型磁石を利用したマイクロアクチュエータ」

日時:2005年5月24日(火)13:30 – 17:00
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:75名

講演内容:

  1. 「電磁力を利用したマイクロマシン」
    本田 崇(九工大)

      近年,永久磁石を内蔵したマイクロマシンのユニークな特徴が見直されてきた.本講演では,永久磁石を使った自己保持性や外部磁界によるワイヤレス駆動を中心に,マイクロマシンにおける永久磁石の起用法について解説した.
     

  2. 「マイクロミラーデバイス」
    宮島博志(オリンパス)

      MEMSでは比較的少ない電磁型アクチュエータの実用化例として,電磁型MEMS光スキャナの開発経緯を紹介した.これは走査型共焦点レーザ顕微鏡に搭載され,測定用途として充分な精度と高信頼性を実現したことを述べた.
     

  3. 「医療用マイクロロボット」
    石山和志(東北大)

      体外から磁界を与え,体内の小型磁石が受ける力で体内の医療機器をワイヤレスで動かす研究の中から,内視鏡的粘膜切除術,ガイドワイヤの挿入,大腸内視鏡の挿入に関する研究動向を紹介した.
     

  4. 「高性能小型磁石モータ」
    山下文敏(松下電器)

      情報通信機器モータは概ね100mm3まで小型・薄型化している.モータ体積とトルクには累乗近似が成り立ち,モータ性能を維持しながら小型化を図るには永久磁石の高エネルギー積化とモータ構成要素の最適化が必要であることを述べた.
     

  5. 「小型Nd-Fe-B焼結磁石の特性改善とそれを用いたモータ特性」
    町田憲一(大阪大)

      微小に加工されたNd-Fe-B系焼結磁石の磁気特性を効果的に回復,高性能化するためにDy等の希土類金属を成膜して、磁石内部に拡散させる新規技術について解説した.高性能化した磁石を実装したDCブラシレスモータを試作し,その性能について紹介した.

 本研究会では、実用的な観点から重要と思われる数ミリからサブミリオーダーのサイズにおいて大きな駆動力が期待される電磁力を用いたアクチュエータについて,第一線の研究者をお招きし,最新の研究成果を紹介していただいた.
本研究会は午後のセッションのみで短い時間であったにもかかわらず,多くの方々に参加していただき,この分野への関心の高さを改めてうかがい知る事ができた.最後に,お忙しい中,お引き受けいただいた講演者の皆様に紙面をお借りして感謝いたします。

(信越化学 中村 元)